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新たなる浄化への準備【五章・完結】

 マティマナはルードランに手伝ってもらい、古い倉庫を魔法専用の建物へと造り変えた。

 触媒細工で、乾燥部屋を造ったときと似たような感じだ。

 暗黒の森からの拾得物で、砂や土のような素材を保管する倉庫代わりにしてい場所。だが程良く素材が収められたためか、マティマナは何かにっつかれる感覚で使用用途の決まっていない魔法専用棟を造りあげた。

 

「暗黒の森からの拾得物に、土やら砂やら石が多かったので、今回は地中を掘らずに済みましたね」

 

 それでも、ルードランからの聖なる魔気の補給は受けた。

 マティマナがソーチェの浄化で使用した膨大な聖なる魔気は半ばに回復していたので、つい、そんな触媒細工をしてしまった。なので、ふたりで合わせた聖なる魔気の量はかなり少ない状態だ。

 

 ルードランはマティマナを抱きしめると、さっそく暗黒の森に連れてきてくれた。

 

「マティマナと一緒に魔法を使うのは良いね」

 

 手を繋ぎ、のんびりした散歩のように暗黒の森を歩く。聖邪の循環の速度が凄いので、のんびり散歩くらいには歩けるようになった。

 

「はい! わたしひとりでは危うくて」

 

 大量の聖なる魔気を使用する大がかりな触媒細工は、ひとりではしないことにしている。

 本来は魔気の器を越えた量を使用する魔法など有り得ないらしいが、マティマナの触媒細工は聖なる魔気が継ぎ足しされて行くと知った。継ぎ足し量が多いと、聖女の杖に蓄えた分も知らない間に使ってしまいかねない。

 マティマナには、魔気量を把握する方法がないのだ。

 

「マティマナには自由に楽しく、魔法を使ってほしいのだけど」

 

 ルードランはそんな風に言ってくれるが、マティマナが魔気量を把握できずに使い果たしてしまうことを常にしているようだ。

 

「お手間とらせてしまいますが、ルーさまと手を繋いで魔法を使うのが、わたしには楽しくて。最高です」

「僕も、マティマナが魔法を使うのが、とても楽しいよ。一緒に魔法を使えるのは、とても良い」

 

 堕天翼絡みの騒動は、依然、渦中のままではあるが。ふたり、庭園を散策するように呪いに満ちた暗黒の森を歩いていた。魔気量不足は禁物だ。できる限り、満たしておく必要がある。

 

「こんな最中(さなか)なのに、わたしルーさまと一緒にいられるから幸せなんです。呪いの森でも、天国ですよ?」

 

 拾得物がガンガン飛んで行くらしきと、マティマナを満たした後、今度はルードランへと流れていく聖なる魔気の感覚。それらを満喫している。

 ふたりっきりで逢い引き、ともいえた。

 

「僕は、マティマナが魔法で造りだしていくものが楽しみでならないよ。驚きと、幸せを造りだしてくれている」

「それは、とても嬉しいです。暗黒の森を浄化しながら、素材が手に入って、聖なる魔気も満たせますし。ルーさまと、一緒にいられます」

  

 とても幸せですよ、と、囁き足した。

 

 城塞都市カルパムとは今回の一連の流れのままに同盟関係になった。

 カルパム領である暗黒の森を浄化するのは、互いにメリットだと領主のリヒトは言う。

 大魔道師の存在する都市と同盟関係である価値は、ライセル小国にとって計り知れない。

 

 

 

 聖なる魔気が満ちたので、工房へとルードランの転移で戻った。ルードランは法師ウレンに籠の回収を依頼すると、続けて転移し塔の最上階だ。

 正面から抱き合った体勢の腕が少し緩められ、ルードランの指先におとがいが捉えられる。

 

 淡く触れ合う唇の感触――。

 

「ここでキスするのが好きなのだけど、今後は、ちょっと場所を考えないとだね」

 

 軽く唇を触れ合わせたままルードランは囁き、その後でキスが深くなった。

 キスは甘美でくらくらする。

 マティマナのルードランの背へと回した腕は、力が抜けがちだ。

 

「ここ、まずいのですか?」

 

 キスが解かれた後、マティマナはボーっとルードランにれながら訊いた。

 

「天空人たちが降りてくるからね」

 

 思案げにルードランは応える。

 

「ぁ、あぁ、そうでした! ジュノさんも、空からいらっしゃいました」

 

 ジュノエレは魔法攻撃され傷ついた身体で墜落するように、この塔の最上階へと不時着した。

 今後、天空人たちは空からやってくる。空からだと、ここは丸見えだ。

 

「近々、交流が始まるね」

 

 天空城は神獣と同じで、下から見上げても見えない構造らしい。今後、見えるようになるかは謎だが。ただ、近づけば見えるのは、ライセル領地の上空へと誘導してくる際に確認できた。

 

「楽しみです」

 

 ライセル小国は、異界である鳳永境(ほうえいきょう)、海中の竜宮船に続き、天空城という貿易国が更に増えることになるのだ。違った文化に触れるのは楽しい。

 新たな驚きがきっとあるだろうと、マティマナは今からワクワクしていた。

 

「一階下だと景色があまり見えないし、どうしようか?」

 

 ルードランはキスへと話題を引き戻した。悪戯っぽい表情で、マティマナの顔を覗き込んでくる。綺麗な貌に浮かぶ微笑は極上の美しさで陶然としてドキドキが止まらなくなる。婚姻し伴侶となっても、その辺り、全く変わらなかった。

 

「秘密の小部屋とか? あそこは、とてもステキな景色です!」

 

 幻想的な景色が展開する。不思議なライセル城の一室。最初に連れていってもらえたときの衝撃は、今も思い出すたびに心がときめく。

 

「あそこでは、キスだけじゃ済まないよ?」

 

 マティマナの顔を覗き込んでいたルードランの顔が、また少し近づいてキスされていた。

 

「ぁ……そ、それは、そうかも……?」

 

 提案しておいてマティマナは真っ赤になり心がジタバタしてしまっている。

 

「マティマナ、本当に可愛いなぁ。ずっと独占し続けたいよ。閉じ込めたくなる」

 

 ギュっと抱きしめ直されながら、耳元に囁かれた。

 

「ルーさまと一緒にいられるなら、わたしどこでも天国ですよ?」

 

 閉じ込められるなら、ルーさまと一緒が良いです。

 言葉を足すと、ルードランはくつくつと笑いだした。

 そういう意味じゃないのだけど、と、言葉を足しながら抱きしめる腕に力が籠もる。

 

 更に転移されて寝室だ。

 安楽椅子に座るように、ルードランはマティマナと横並びで寝台へと座り込む。

 

「僕が、マティマナを閉じ込めたいのはここかな」

 

 ルードランはマティマナの肩を抱くようにしながら耳元で囁いた。

 

「どこでも。ルーさまと一緒なら天国です。ずっとずっと一緒にいたいです」

 

 マティマナは、ルードランの肩口に頭を寄せ、応える。

 ふたりで過ごす刻は、増えたような減ったような、微妙さだ。

 もっともっと、ルーさまを独占したいです。

 心にも、直接囁きかけた。

 

 以前、一緒に未来を造っていこうとルードランに提案された。ルードランのために生きるのではなく、共に生きることを。

 わたし、ちゃんと、ルーさまと一緒に未来を造れているかな? 頼り切りになっちゃってないかな?

 

 マティマナの思案は、再びのルードランからのキスに掻き消されていた。

 

 


(あとがき)


五章・完結しました!

ここまでお読みくださり感謝です!

 

少しでも面白いと思っていただけましたら、ぜひ評価してくださいませ!

執筆の励みになります!

どうぞよろしくお願いします!


しばらく休載しますが、天空人たちの救出編、六章準備中です!

お待ち頂けたら、と思います!

その間、不定期でSSを投稿する予定です。

もし、キャラの希望等ありましたら感想欄に書いてくださいませ。できる限り書きます!





同時連載している、

「悪役令嬢に憑依したとたん婚約破棄を言い渡されましたが婚約破棄は破棄だそうです」

https://ncode.syosetu.com/n0918il/

こちらも、ぜひ、お読み頂けると嬉しいです。

ライセル小国と同列のウルプ小国が舞台。

ライセル小国から弾かれた、堕天翼の気配もありますです。


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