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怪異との戦闘

 自警団としてマティマナの海の魔法具を試してくれている猟師たちに、それぞれ防具と武器を選んでもらった。

 皆それぞれ、お気に入りの武器が手に入ったようで意気揚々と。宿屋の広間は活気あふれる場になっている。

 

「怪異だぜっ! 随分、でかくなってやす」

 

 先に防具と武器を受け取り、見回りにでていた猟師が慌てて駆け戻ってきた。

 猟師の防具は、かなり格好いい感じに展開して身につけられている。

 一緒に見回りに出て者たちが、戦っているようだ。

 

「行きましょう!」

 

 マティマナはルードランに声を掛けると同時に駆け出していた。ひらひらの衣装だが、気にもせず怪異の気配の方向を目指していた。ルードランは隣を駆けている。

 法師とエヴラールも追うように続いていた。

 

「自ら戦うつもりか?」

 

 エヴラールの非難するような声が届く。

 

「当たり前です!」

 

 振り返る余裕はないので、マティマナはディアートの空間越しに応えた。

 

「いつも、こうなのかね?」

 

 走りながら、エヴラールは呆れたようにディアートの空間越しにルードランに訊いている。

 

「そうだよ」

 

 笑み含みのルードランの声が、隣からと空間越しとで聞こえてきていた。

 

 

 

 マティマナの防具と武器は、腕輪にしている聖女の杖に入っている。

 ルードランも、腕輪にしている武器に吸い込まれていた。

 法師は、手にしている常の杖に武器も防具も一体化している。

 

 波打ち際と海上に、怪異らしきが見えた。

 

「まあ、本当に大きいわね!」

 

 巨大なたこ烏賊(いか)、これは若干の変形のある巨大化でも判別できる。見覚えのある、だが巨大な触手、そして中心には人間の形に似たような本体らしき。化身した怪異のようだ。同じような巨大化でも、人間めいた姿があるものは甲冑を身につけている。巨大化だけした感じのものは、もっと流線型の本体から、たくさんの触手が出ている。

 

 烏賊型のほうが、眼が怒りに満ちたような形で見た目に怖い。

 ただ大きいだけで厨房で見掛けているせいか、マティマナとしてはなんとなく恐怖感は少ない気がした。

 

「良く分からない形のものがいるね」

 

 ルードランの視線の先には、固い皮革を纏ったような竜に似た形。しかし、邪悪な感じで角やら尖った背びれのようなものやらがあり怪獣めいている。

 

「あれは、タツノオトシゴのたぐいだろう」

 

 エヴラールがルードランに応えている。

 

「タツノオトシゴ……? 元は可愛いのに、固くて強そうね」

 

 海の魔法具が甲冑化している猟師たちが、海上で怪異と戦っているのが見えた。マティマナからの新たな海の武器は、怪異の大きさに合わせたように皆更に大きさを増し、蛸型や、烏賊型をスッパリと切り裂いている。化身した怪異たちは、切り裂かれると断末魔めいた声を上げながら、光を放ち消えて行くようだ。

 

「海の武器は性能が良さそうだ」

 

 エヴラールの声が背後から聞こえたかと思うと、立ち止まったマティマナを追い越して海へと入って行く。海の魔法具の実験をしていたからか、迷いがない。

 

 波に触れる間際でエヴラールの身体は光に包まれ、新たな防具を身につけていた。

 あら、他の方々と形が違うわね。とても、博士に似合っているみたい。

 大きな鎌は、とても美しく兇悪な形と化している。初めて使用するとは思えない、見事な所作で巨大蛸を掻き切っていた。

 

「博士は、何か武術を習得してらっしゃるのかしら?」

「ひとりで何処にでも行くからね。護身術は身につけているようだよ」

 

 ルードランの言葉に、マティマナは納得して頷いた。

 

「皆さん、防具も武器も全く形が違うのね!」

 

 言いながらマティマナも海へと向かおうとしたが、不意に砂浜に怪異が現れる。

 

「マティマナ、気をつけて!」

 

 ルードランの声に頷きながらも吃驚(びっくり)だ。

 

「転移するのぉ?」

 

 ひゃああっ、と、心のなかで小さく叫び声をあげつつ、マティマナは聖女の杖を振るう。近くに現れた烏賊型の怪異を、聖女の杖と一体化した海の武器から雑用魔法が放たれきらきらと包んで行く。

 パアアッ、と、派手な光を放ちながら怪異は消えた。

 

「魔法でも、武器でも、同じような効果だね」

 

 隣で別の怪異を、ルードランは巨大化した剣で倒していた。魔法と同様、光を放ちながら消える。

 聖なる要素と、複数の触媒の成せるわざらしい。

 法師も、マティマナと同じように杖で術を放っている。

 

「皆、つかいこなせていて凄いです!」

 

 気づけば、三人も、しっかり甲冑めいた防具を身につけていた。

 マティマナは防具を身につけたことに気づかなかったくらい、軽い。

 

「マティマナ、その姿、とてもステキだよ!」

 

 甲冑といっても、マティマナの身につけているのは、宝飾品のような印象だ。衣装の上からドレスを更にまとったような優雅な柔らかそうな素材。それが、甲冑らしい。海の飾りが散らされて防御を強めているようだ。

 

「ルーさまも、とてもステキです!」

 

 ルードランは、正装めいた衣装の部分部分に甲冑らしき装飾品が飾られている。防具というには、お洒落だ。だが、とても強力な防御になっているのは分かった。

 法師は、どちらかといえば、マティマナ寄りの布めいた甲冑。豪華な、外套のような防具だ。

 

「王妃さま、素晴らしい甲冑ですよ、これは!」

 

 法師ウレンは、驚きと共に嬉しそうな声を立てている。

 

「このまま、海の中に入れるみたいですね」

 

 マティマナは、身につけてみた感触でそれを知った。

 

 

 

 かなり多数の怪異が、次々に海から湧いてでてくる感じだ。転移なのだろうが、これではキリがない。

 いつの間にかマティマナとルードランはじりじりと進んで波打ち際へと来ていた。

 不意に、ふたりの目前に、超巨大な怪異!

 

 なに? なんなのこれ? 何の化身なのだろう?

 マティマナはしかし、色々考えるより前に、膨大な量の雑用魔法を、海の武器を通してかけていた。どさくさで撒いた雑用魔法は、怪異を消滅させた後も、海面をきらめかせながら拡がって行く。

 

「これは凄い」

 

 エヴラールの声。隠さなくて良くなったマティマナの雑用魔法は、誰の目にもキラキラが確認できるのかもしれない。或いは、色々な触媒のお陰か、皆、光に見蕩れてくれている。

 

「怪異たちが、海に閉じ込められたようですね」

 

 法師も感心したように呟く。

 

「雑用魔法、まだ続いてます……」

 

 武器からあふれ続け、まだ止まらない。

 

「大丈夫かい? 魔気を使いすぎて……は、いないようだね」

 

 魔気量を知ることができるルードランは、マティマナの魔気が全く消費されていないことにホッとした様子だ。

 

「はい! 大丈夫です!」

 

 マティマナは元気に応える。

 

「これなら、明日の朝くらいまでは出てこれないでしょう」

 

 法師は、雑用魔法できらきらと光る海を眺めながら確信したように告げてくれた。

 

 


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