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聖女マティマナの衣装替え

 儀式的なものは終了し、昼間だが会場は夜会に近い様相になってきている。

 宴になると、庭園への扉も開けられた。

 ざわめきと共に、踊りのための音楽も流れはじめている。

 

「おめでとうございます! おふたりの愛は、空高く広がっているように感じます」

「お二人の結婚は、ライセル小国にとって新たな希望となりました」

「これからの人生が素晴らしいものであることを願っております」

「結婚式を祝福し、ライセル小国の発展を願います」

「神のご加護を祈りながら、お二人の人生に幸福が訪れるように願っています」

「二人の愛が永遠に続くことを祈っています」

 

 結婚式に参加してくれた者達が、次々に訪れ幸せを祈り、温かい祝福の言葉を贈ってくれていた。

 

「続きまして、ライセル小国王妃であるマティマナ様が衣装替えに入ります」

 

 しばらくの歓談の後で、王妃となったマティマナの衣装替えをする旨が告げられた。

 

 マティマナはルードランに手を取られながら、笑みを向ける。

 

「ここで、衣装替えしますね!」

 

 ルードランへとこそっと囁くと、マティマナは聖女の杖を取りだして大きく変化させ、しゃらしゃらと心地好い音をさせながら振るう。本当は、雑用魔法にそんな演出は不要なのだが、無言で所作もないとなると魔法を使っていると分からない。

 なので聖女の杖を振るい、できるだけ派手に聖なる光をふりまき、その光に包まれながら控え室の人形型に着せてある衣装と、今身につけている衣装とを交換した。マティマナは、聖王院から賜った聖女の証しである緑のドレス、緑の宝石がふんだんな飾りを身につけ、ティアラも聖女のものになる。

 

 マティマナを取り巻いていた光が消えると、衣装替えの済んだ姿でルードランに手を取られた形になった。

 

「内緒で随分と練習したのかな?」

 

 コソッとルードランに訊かれ、小さく頷く。

 なかなか良い考えだね、と、ルードランの楽しそうに弾む声が、心のなかへと響いてきた。

 

「皆さまを待たせるのは良くありませんから」

 

 少し赤くなりながら小さく応えている間に、会場にはどよめきが拡がっている。

 マティマナは、ルードランに手を取られたまま丁寧な礼をした。

 

「マティマナ様、聖王院より賜った聖女正装のご披露にてございます!」

 

 司会役の家令が、冷や汗の気配で皆に知らせている。

 派手な光が舞ったから、皆、注目してくれていたとは思う。

 

「では、マティマナ。一曲、踊ろうか」

 

 ルードランの声を聞きつけ、家令が合図を送る。楽団は一旦止まっていた音楽を奏で始めた。

 ふたりで踊る曲の前奏だ。

 

 マティマナは杖を腕輪に戻し、踊りの場へとふたりで進む。

 踊り終わったものたちは引き上げ、ルードランとマティマナのふたりきりになっていた。そして幸せな未来を祈り愛する人とともに過ごす人生に感謝する、という願いが込められた美しい曲が流れ始める。

 

 王と王妃が踊るということで、場の周囲に人々が集まってきていた。

 

 ルードランが踊りの邪魔になる外套部分を外すと、異界の豪華衣装の派手さが際立った。聖女のドレスも、異界のドレスに負けず劣らずの派手さだ。聖女の正装は、聖王院にのみ許されている単色緑の艶やかな色合い。通常、見ることのできる者は少ないから印象的だろう。

 

「ルーさまと、ふたりで踊るの、とても好きです」

 

 マティマナはうっとりと囁く。楽の音に合わせ、ふたり踊り出せば別世界に浮いているような心地になった。ルードランの衣装は宝石がキラキラと、聖女のドレスの裾はふわふわと幻想的な舞いかたをしている。

 感嘆したような溜息が、あちこちからきこえてきた。

 

 踊る途中に、ふたりの耳縁飾りから、魔法めいた力があふれだし幸せな幻想風景を描き出している。ライセル城の地下に住まう精霊からの祝いのようだった。

 集う者は皆、陶然とれ、精霊からの祝福を受け取ることができている。

 

 夢心地で踊り終わると、拍手喝采でルードランの名も、マティマナの名も、讃えるように呼ばれ続けていた。

 

 

 

 ふたりは連れだち、主城二階へと上がると張りだしへと歩みでる。城前の庭園には、領民たちが新しい王と王妃を一目見ようと詰めかけてきていた。もの凄い歓声だ。

 マティマナとルードランは手を振り、応える。途端(とたん)に、声援が高くなり、マティマナはかなり驚いた。

 あちこちから祝福の声が聞こえ、幸福感が満ちて行く。

 

(皆、マティマナの聖なる力が都の護りに入ったことが分かるのだと思うよ)

 

 ルードランは、群衆へと手を振りながら、驚いているマティマナへと心に囁きかけてきた。 

 

(婚儀のとき、ライセル家の護りとして組み込まれたと分かりました! とても、心地好くって嬉しかったです!)

 

 マティマナも、手を振りながら心へと言葉を返す。

 拍手と声援のなか、名残惜しく感じながら、ふたりは宴の会場へと戻って行った。

 

 

 

 宴もたけなわな雰囲気のなか、聖王法師ケディゼピス・エインが聖女見習いのライリラウンを連れて近づいてきた。ケディゼピスは参列者を威嚇するようだった大夜会のときとは違い、和やかな気配で宴会に紛れている。

 軽い挨拶を交わし合った後で、聖なる贈り物としての法術を披露してくれた。

 ライリラウンも、その術に、彩りを添えてくれている。

 

 空中に華やかな魔法陣めいた光が描かれ、幻想的で色鮮やかな光景が天井の高い広間の上方で展開していた。

 

「まぁ、なんて素晴らしい聖なる光なんでしょう!」

 

 マティマナは思わず感嘆の声を上げる。宴会を楽しむすべての者へと、聖なる光は注がれ幸運の度合いを上げていた。

 

「聖なる品の追加も、先程家令殿に托しておいた。ライリからの品もあるから楽しんでくれ」

 

 ケディゼピスが笑み含みに告げる。婚儀のだいぶ前にも、聖王院から祝いの品は届いていたのに更に贈り物をしてくれたようだ。

 

 

 

 聖王院の後は、キーラが舞いおりてきた。キーラはカルパムの領主代行として結婚式に来ている。

 

「はい、これは聖女マティへのお土産よ! 妖精猫の髭と、爪の抜け殻も小袋に入れてあるの。細工物に使ってね!」

 

 そんな風に囁きながら渡してくれた。

 

「それと、これは、カルパム領主リヒト様から。生花の薔薇と、魔気細工の薔薇よ」

 

 カルパム小国からは、既に領主のリヒトと【仙】であるフランゾラム、ふたり名義で大量の祝いの品が届いていた。

 どこから出したのやら。キーラが持ってきたのは見たことのない花だった。マティマナは、生花の薔薇だという白い花の花束を、キーラから持たされている。

 

「なんて綺麗! すばらしい花ね! 薔薇というのですね?」

 

 マティマナは感動しながら手元の独特の形の花を眺めた。

 

「こっちの魔気細工の薔薇は、初夜の寝室に飾るのが良いわよ?」

 

 ルードランは、透明な布のようなもので密封された魔気細工の赤薔薇を受け取っている。キーラから何か囁かれているようだ。透明な何かに包まれているが、赤い薔薇はとても綺麗に見えていた。しかし、何故かマティマナにはキーラの声が良く聞き取れない。

 

「朝になったら、包みに戻すほうが無難ね。誰も出入りしない部屋なら、飾ったままで大丈夫だけど」

 

 キーラは更に、悪そうな笑みを浮かべながらルードランへと囁きを足した。

 

「危険なのかい?」

 

 ルードランが何か訊いている。

 

「媚薬が香るのよ」

 

 コッソリとしたふたりの会話は、マティマナには終始やはり良く聞こえてこなかった。

 

 


(お知らせ)


「理不尽に婚約破棄されたら、王族直系の大貴族に嫁入りすることになりました。」

は、本日19時頃に【3章完結】となります。


それに先駆けまして、本日から、

「ポンコツ魔女は終身雇用されたい ~婚約した領主の溺愛は呪いに阻まれる~」

https://ncode.syosetu.com/n5932if/


異世界恋愛で新連載です。

ちょっとラブコメ風味。ぜひ、合わせてお読みくださると嬉しいです!




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