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林田郷は林田農業を始めたい

大宝元年(七〇一年)に大宝律令が制定される。この大宝律令で地方組織は国郡里の三段階に編成された。播磨の林田は播磨国揖保郡林田里となる。播磨国は山陽道の一国であり、摂津国、丹波国、但馬国、因幡国、美作国、備前国に接する。播磨国は出雲と大和を結ぶ陸上交通路の中間点である。韓国から筑紫(九州)、大和を結ぶ瀬戸内海の海の道の中間点でもある。揖保郡は西播磨にある。揖保郡の東は飾磨郡、西は赤穂郡である。赤穂郡の西は備前国である。


林田里の揖保郡の北東に位置した。その領域は以下である。「里の範囲として,林田川流域の北辺は宍禾郡安師里比定地手前の松山・山田あたりまで,南は美作道想定路線までである。伊勢村の大津茂川流域では,北端を大堤付近とし,南は石倉を限りとすべきであろう。東西に関しては二つの河川流域の両岸,山の稜線を境界とみなせる」(岸本道昭「7世紀の地域社会と領域支配 播磨国揖保郡の古墳と寺院,郡里の成立」国立歴史民俗博物館研究報告第179集、2013年、81頁)


讃岐国の林田湊は阿野郡に属した。阿野郡には讃岐国府があり、讃岐国の中心地であった。林田湊は讃岐国府の玄関口になった。林田湊は綾川を通じて舟運で国府と繋がり、大量の人や物資の流通を担う国府の港として機能した。


阿野あや郡は綾絹の産地であり、渡来人の漢部あやべが織物に携わっていたことが名前の由来である。阿野郡は鎌倉時代になると綾南条郡(阿野南条郡)と綾北条郡(阿野北条郡)に分割される。江戸時代には阿野郡に戻った。


讃岐国は四国の北東に位置する。讃岐国の枕詞は「玉藻よし」である。柿本人麻呂は「玉藻よし 讃岐の国は 国柄か 見れども 飽かぬ」と詠んでいる。讃岐国は、優れた国柄のためか、見て飽きることはないと絶賛した。讃岐国は縦に十一の郡に分けられた。西から刈田、三野、多度、那珂、宇陀、阿野、香川、山田、三木、寒川、大内郡である。


霊亀元年(七一五年)に国郡里制が郷里制に改められた。唐の州県郷里制に倣った制度である。五〇戸から成る里を郷とし、郷を新たに二つか三つの里に分割する。行政単位を分割化し、農民支配を強化しようとした。無駄な組織やポストを作る官僚制の弊害が律令国家にも生じている。うまくいかないことは当然であり、天平一二年(七四〇年)頃に里が廃止され、国郡郷制になった。


里の廃止により、播磨国揖保郡林田里は林田郷に改称された。讃岐国阿野郡は山本郷、松山郷、林田郷、鴨部郷、氏部郷、甲知郷、新居郷、羽床郷、山田郷に編成された。林田郷には田令という職が置かれた。田令は屯倉を管理し貢税を行う職であった。


美作国苫田郡にも林田郷が成立した。これは「はいだ」と読む。林田郷から大豆五斗を平城京に進上したことを記録する木簡がある。

苫田郡林田郷は貞観五年(八六三年)に苫東郡林田郷になる。苫田郡が苫西郡と苫東郡に分割された。その後に苫東郡林田郷は東南条郡林田郷になる。苫東郡が東南条郡と東北条郡、苫西郡は西西条郡と西北条郡に分割されたためである。


平安時代初期になると林田農業(林田農法)が普及した。これは焼畑農業の進化した形態である。焼畑農業は山林を伐採して火入れし、四年間から五年間畑として耕作して放棄する。焼畑農業は森林破壊と土壌汚染が発生する。


林田農業は伐採後に火入れせずに畑として十年ほど耕作して林に戻す。林に戻す際はハンノキを植えて地力を回復させる。ハンノキは空気中の窒素を固定するために地力回復になる。ハンノキの樹皮は染料になり、樹木は家具の用材になる。林田農業では森林保護ができ、土壌も肥沃化する。また木材資源や食糧生産にも寄与できる。焼畑農業に比べて持続可能性が高い。


林田農業は国司や大領主ではなく、独立した小農民によって運営された。日本には大規模農業が効率的という感覚があるが、小規模の経営の方が資源を効率的に利用できる。


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