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保元の乱は謀反の冤罪

保元元年(一一五六年)に鳥羽院が危篤に陥る。崇徳院は見舞いに行ったが、後白河天皇に追い返されてしまった。鳥羽院は遺言で遺体を崇徳院に対面させることも禁じた。


鳥羽法皇が崩御すると、後白河天皇の側近の信西が陰で崇徳院と藤原頼長が兵を集めて反乱を起こそうとしているとの噂を流した。後白河天皇は噂を口実として、頼長を攻撃する。七月六日に京にいることが不審という理由で頼長家人の源親治みなもとのちかはるを逮捕した。怪しいから逮捕という警察国家の手口である。


七月八日には各国の国司に頼長が荘園から武士を動員することを禁止するように命じた。同じ日に頼長の邸宅を没収した。崇徳院や頼長に挙兵の意思はなく、謀反は冤罪であった。後白河天皇の措置が挙兵に追いやってしまった。


こうして保元の乱が起こる。保元の乱は以下の二陣営で争われた。

後白河天皇、関白・藤原忠通、源義朝、平清盛

崇徳院、藤原氏長者・藤原頼長、源為義、源為朝、平忠正

保元の乱は皇族も公家も源氏も平氏も親兄弟や親族同士で戦った。


崇徳院の陣営は白河殿にこもった。源為朝は夜襲を提案した。

「夜襲は武士達が数十騎で行う私戦の話である。上皇と天皇の国家の争いには相応しくない」

藤原頼長は冷たく退けた。

「多勢に無勢で、敵の攻撃があった場合に守り切れるか自信がありません。夜襲ができないならば崇徳院の東国御幸を提案します」

これも頼長は却下した。白河殿は権威の象徴であり、そこを離れることはとんでもないという考えである。

「合戦は朝廷の儀礼とは異なる」

為朝は憤慨した。頼長の態度は後の関ヶ原の合戦前夜の石田三成に重なる。島津義弘が夜襲を提案したが、三成は夜襲を田舎者のすることとし、正々堂々の戦いをすべきと否定した。


頼長は奇襲をかけず、迎撃に徹することを命じた。これは愚策と批判されるが、頼長には頼長の戦略があったとする見解もある。

第一に大和からの援軍の集結を待ってから反撃するつもりだったとする。頼長は藤原氏の氏寺の興福寺の僧兵を援軍として期待していた。興福寺の僧兵が援軍に来て優勢になってから攻撃すれば良いと考えた。これは援軍が来ることがどれだけ現実的かにかかっている。奈良の兵は父の忠実がまとめて率いる話になっていたが、忠実は頼長が敗北して連座することを恐れて動かなかった。

第二に頼長は兄の忠通の裏切りを期待していた。後白河天皇方の武士が攻め寄せた隙に忠通が裏切り、天皇を押さえて、信西を排除する計画があった。戦前から忠実や頼長の摂関家領をめぐって忠通と信西は対立していた。忠通は摂関家領を自分が継承するものと主張したが、信西は院近臣で分けようとしていた。頼長は摂関家の領土保全のために共同戦線を持ちかけた。しかし、忠通は動かず、頼長の計画は実現しなかった。


後白河天皇の陣営では源義朝が先制攻撃を主張し、受け入れられた。後白河天皇や忠通は平安京で戦をすることを躊躇したが、側近の信西が押し切った。

源義朝は後白河天皇から逆賊追討の宣旨を受けた。これまで義朝は多くの合戦を経験していたが、全て私戦であった。朝廷から宣旨を受けて戦うことは初めてである。これまでは私戦であるため、後で朝廷から罰を受けないかと怯えていた。宣旨を受けて堂々と合戦ができることを清々しく感じていた。


源義朝と平清盛が兵を率いて進軍を開始した。序盤は源為朝の活躍で崇徳院側が優勢であった。為朝は強弓を繰り出し、清盛や義朝の兵力に大損害を与えた。

義朝は合戦の状況を逐次使者を出して後白河院に報告した。その内容は詳細で、その場にいるようであった。後白河院の近臣は義朝の報告に感心した。

後白河天皇側は崇徳院の御所の隣地に火を放ち、御所を延焼させようとした。御所に火が燃え移って崇徳院側は浮足立ち、敗北した。


源義朝と平清盛にとっては立身出世のきっかけとなった戦いではあるが、崇徳院側の身内と敵対することになり、源義朝は父や弟達、平清盛は叔父を処刑する結果となった。父を処刑した義朝は親殺しの悪評を受けることになった。これは義朝が平治の乱で振るわなかった一因である。源頼朝以降の源氏嫡流は親族同士の殺し合いで途絶えた。それ以前から源氏には同族で殺し合う傾向があった。



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