藤原純友は大宰府を占領したい
好古は純友の有力幹部を調略し、純友の拠点を把握した。純友は瀬戸内海の海賊達のまとめ役であったが、統制は取れていなかった。純友は部下の統率に失敗し続けた。
天慶四年(九四一年)二月、純友は本拠地の日振島で休息をとっていた。そこに好古らが攻めてきた。
「何者だ!?」
「我こそは小野好古である」
「ほう。貴様が小野好古か。わざわざ殺されに来たのか?」
「その通りだ」
「ならば、返り討ちにしてくれる」
純友と好古の戦いが始まった。戦いの最中に好古の部下達が乱入してきた。
「これは厳しいな……」
純友は苦笑した。純友は撤退し、日振島は陥落した。
ゲリラ的に行動する純友は本拠地にこだわらず、九州に渡って大宰府を目指した。
「大宰府か……。懐かしい場所だな。そういえば、昔はここに住んでいたんだよな」
純友は博多湾から上陸した。
「何者だ!?」
「我こそは藤原純友だ!」
「お前はあの時の……!」
「久しぶりだな」
「この野郎!」
純友達は大宰府の官人を次々に討ち取っていった。
「大変です! 純友軍が攻めてきました」
「何だと!?」
純友は大宰府を占領した。
好古は豊後に上陸し、陸路から大宰府の攻略を目指した。陸戦の不利を悟った純友は大宰府を焼いて博多湾から船出し、五月に博多湾の戦いが起こる。
大蔵春実率いる追捕使の水軍が待ち構えていた。
「やっと来たか。待ちかねたぜ」
春実は嬉々として迎え撃った。
「これで終わりにしてやる!覚悟しろ!」
純友達は奮戦したが、多勢に無勢だった。純友は大敗し、船団は壊滅した。春実は純友の船団のうちの八百余艘を奪った。
「それで、どうなったんだ?」
「それが、取り逃がしてしまい、行方がわからなくなってしまいました」
「そうか……。それなら仕方ないな」
「申し訳ありません」
「まあ、よい。また、機会はあるだろう」
「その通りでございます」
純友は伊予国に逃れた。
「今度は絶対に逃さない」
好古は軍を率い、純友を追った。純友は讃岐国林田郷に逃れ、そこでもゲリラ戦を展開した。
「純友め……、どこまで逃げる気だ」
「どうかお願いします! 私と一緒に戦ってくれませんか?」
純友は在地勢力を頼ることにした。
「断る。お前の頼みを聞くつもりはない」
「そんな冷たいこと言わないでください。一緒に戦いましょう」
「何度も言っているように、私は戦う意思など無い」
「なぜですか? なぜ、そこまでして私を拒むのです?」
「私は平和主義者なのだ。争いごとは嫌いなんだ」
「そうだったんですか……。私はてっきり、あなたは私と同じ志を持っているのかと思っていました」
「残念ながら、私にそのような気持ちは無い。私は平和を愛する男だ。だからこそ、この乱世を終わらせるために尽力しているのだ」
「そうですか……。それならば仕方ありませんね」
純友は背を向けた。
「待て! どこに行く? 私の話はまだ終わっていないぞ」
「これ以上、話すことはありません」
「そう言うな。私達は共に同じ理想に向かって進んでいる同志ではないか。ここで別れる必要も無いと思うがな」
「あなたの気持ちはよく分かりました。ですが、やはり、私達の道は違うようだ」
純友は去って行った。
「全く……。何を考えているのか、よく分からん奴だ」
在地勢力は純友の行動が理解できなかった。