小野好古は藤原純友を探したい
「よくも私の邪魔をしてくれたな!」
讃岐守は激怒した。
「まさか、ここまでやるなんて思ってもみなかったよ……」
「このまま放置しておくことはできないな……」
「俺達にはもう打つ手はないのか?」
「いや、まだあるはずだ。何とかしなければ……」
「どうやって?」
「それは分からない。だが、今はとにかく考えるしかないだろう。幸いにも時間はたっぷりとあるんだ。じっくりと考えれば必ず打開策は見つかるさ」
「確かにその通りだな。焦っても何も解決しないもんな」
「そういうことだ。だから、気長に考えよう」
朝廷は天慶四年(九四一年)正月十五日に朱雀天皇御前の公卿会議を開き、純友の追討を正式決定した。小野好古を追捕山陽南海両道凶賊使、源経基を副使、藤原慶幸を判官、大蔵春実を主典として派遣した。
「やっと、俺も官職に就くことができた」
「おめでとう」
「ありがとう」
「これから私達は同僚ということになるな」
「ああ、よろしく頼む」
「こちらこそ」
「とりあえず、今日は飲むとするか」
「いいねえ」
追捕使同士は酒を飲み始めた。
「この酒美味いな」
「うん。すごく飲みやすいよね」
「私の手で奴を討ち取ってくれる」
好古は決意した。
「純友という男について何か分かったことはあるか?」
「はい。調べておきました」
「流石は我が右腕だ。早速聞かせてくれ」
「純友は優れた戦術家であり、軍師としても優秀だったようです」
「そうか。それは厄介だな」
「さらに、純友は義理堅く情に厚い性格をしていたようで、部下からも慕われていたようです」
「ふむ。なかなかの人物のようだな」
「それと、もう一つだけ報告することがあります」
「何だ? まだ、何かあったのか?」
「はい。純友は海賊をやめて商人になりたかったらしく、商売上手でもあったらしいのです」
「ほう。それは面白い話ではないか」
「そうなんです。もし私が商人になったとしても、うまくいくかもしれませんね」
「お前が商人になるなんて想像できないけどな」
「確かに私は生まれながらにして武士だったのでしょう。でも、もしもの話ですよ」
「そうだよな。すまない」
「いえ、気にしないでください」
「わかった。話を戻そう」
「はい」
「とにかく、純友の行方を探すぞ!」
「承知しました」
しかし、純友の姿を見つけることはできなかった。
「それにしても、まさか純友様がここまで大物になるとは思わなかったな」
「私も同じだよ。だから、びっくりしたんだ」
「純友様は凄いよな」
「本当に凄いと思う」
「ところで、どうしてそんなに純友様のことが好きなんだよ?」
「だって、純友様はとても優しくて思いやりのある人なんだもん」
「へえー。そうなのか?」
「そうだよ。純友様は部下のことを家族のように大切にするんだから」