藤原純友は淡路島を襲いたい
朝廷は藤原純友の反乱に驚いた。
「また、反乱が起きたらしいぞ」
「しかも、今回は瀬戸内の海だ。海を封鎖すればいいのではないか?」
「いや、無理であろう。船を焼き尽くされてはかなわん」
「ならば、海上警備を強化するしかないな」
「ああ、そうだな」
「それから、水軍も編成する必要があるな」
関東では平将門の乱が起きており、朝廷は二方面同時作戦の余裕はなかった。藤原忠平は平将門の乱の鎮圧を優先し、純友には懐柔策を出した。
「このままではまずいな。何とかしないと……誰か、いないかな。純友を説得できる者は……」
忠平は天慶三年(九四〇年)一月に純友に従五位下の位を授けた。しかし、純友は懐柔されなかった。将門よりも純友の方が懐柔しやすいと考えることが不思議である。藤原北家出身で貴族社会出身の純友は将門より話が通じると思ったのだろうか。
純友は二月に海賊集を率いて淡路島に上陸した。純友は淡路国の受領の淡路介に面会を求めた。
「純友殿ですか。私は淡路介です。何か用でしょうか?」
「ああ。実はな、部下が殺されてな」
「それは大変ですね。何があったんですか?」
「それが、わからないのだ」
「そうなのですか?」
「どうすれば、わかると思う?」
「うーん……」
「まあ、無理だろうな。淡路介がそんなことを分かるはずがない」
純友は嘲るように言った。
「……どういうことですか?喧嘩を売っているのなら、買いますよ?」
「ふん。貴様ごときに負けるわけないわ」
「随分と言ってくれましたね。では、勝負しますか?」
「望むところだ。返り討ちにしてくれる!」
こうして、純友と淡路介の戦いが始まった。
戦いが始まると、純友は刀を抜いて斬りかかった。
「死ねぇっ!」
純友は刀を振り下ろしたが、淡路介は刀で防いだ。
「くらえっ!」
純友は蹴りを放った。
「ぐふぅっ!」
純友の攻撃を受けて、淡路介は後退した。
「まだまだぁっ!」
純友は更に攻撃を続ける。
「くっ……。なかなかやりますね」
「そちらこそ……」
二人の実力はほぼ互角であった。しかし、体力は純友の方が上だった。
「くらえぇっ!!」
純友は渾身の力を込めて、突き刺した。
「うっ……。参りました」
純友の攻撃を受けた淡路介は敗北を認めた。
「私の勝ちだな」
「はい。私の負けです」
「約束通り、私に従ってもらうぞ」
「分かりました」
「よし!この機会を逃すな」
純友は国府の武器庫を制圧し、武器を奪った。
「これからどうするんですか?」
「京へ向かう」
純友の戦略は、海賊を率いて京を攻略し、朝廷を潰すという積極的なものであった。
「でも、どうやって行くんです? 」
「実はな、俺も考えがあるんだ」
純友は不敵な笑みを浮かべた。京に攻める前準備として純友は京に工作員を潜入させ、放火を頻発させた。
「私に考えがあるんだ。まず一斉に弓を構えてほしい。そして火矢を放つんだ。そうすれば、たちまちのうちに火事となるだろう。その後、我々は消火活動にあたるふりをして、そのまま逃げ出せばよい」
「何? 純友が攻めてきただと?」
藤原忠平は驚いて声を上げた。
「はい。どうやら、純友たちは淡路を渡ってきたようです」
「厄介なことになってきおったな……」
「いかがいたしましょうか?」
「とりあえず、兵を集めて迎撃しよう」
「承知しました」