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伝承図書館

「ジークさん、私のリーリアがどこかに行ってしまったの!」

「あーはいはい、後で探しに行くんでちょっと待ってて下さいね」


『クエスト発生『なんでよリーリア』 難易度・高』


 俺が苦笑いを浮かべながら告げると、ピコンという音と共に見慣れたウィンドウが目前に現れる。

 軽くため息を吐きながらそれを掻き消すが…これで何度目だ?


 伝承図書館とやらに向かう道中、既に5人近くのNPCにクエストを依頼された。

 そしてその全てが難易度『高』という…まぁ、『最高』よりマシだけどね。

 二度とやりたくないからね。



「…おっと、ここか」


 人語を解すにも関わらず、明確に思考の仕組みが異なる怪物との2連戦を思い出していると、いつの間にやら地図に映る自分の表示が目的地の前にある事に気がつく。



「デカいなぁ…」


 伝承図書館という場所に向き直し、まず俺はその大きさに驚き、次に、その外見に違和感を覚えた。


 このニーベルングという街は、森を切り開いて作ったような街だというのに意外と広い。

 いや、ゲームだからと言われればおしまいなのだが、広場に住宅街、歓楽街とそれぞれ相応の広さを有する街だ。


 街の中央には小さな城のような建物もある。

 北欧系の堅牢な感じ、攻め込まれにくそうな見た目をしている。

 おそらくはこの付近を治める領主でも住んでいるのだろう、入口は衛兵に守られていた。


 そんなこの街の各所を見ていた俺だが、それでもこの建物は非常に大きく感じる。

 住宅街近くに立つソレは、辺りの民家や屋敷に換算して十数棟分の敷地と、三棟を縦に積んだ程の高さを有しており、威圧感は異次元だ。


 そして奇妙なのはその外観。

 北欧をイメージしているらしいこの街の風景で、この建物だけ異質なのだ。

 まるで、この建物だけイギリス辺りから切り抜いて持ってきたような…


 まぁ、なんだかわからないが設定があるのだろう!

 俺はそういうの考えるタイプじゃないし、これぐらい検証系プレイヤーが既に調べてるだろうしな!


 そう内心で言いながら、俺は図書館の入口に近づいて扉を開く。

 すると、俺の視界は明転して─────


▽▽▽▽



「うおっ…入ったのか?」


 どうやら図書館の外部と内部は地続きではないようで、扉を開いたと思ったら、いつの間にか内部の中央に移動していた。


 辺りを少し見渡せば、宙を舞う座席に山のような本と棚。

 古い紙やインクの香りが漂っているのはとても図書館らしくていいな。



「…おい、あれジークじゃないか?」

「じゃないかって、間違いなくそうだろ…」

「やっぱあの人も…」


 見慣れない光景に少しウキウキしていると、近くの座席に座った数人の声が聞こえた。

 わずかに目を見やると、「うおっ、こっち見たぞ!」「あ、握手とか大丈夫かなぁ」などと言っていたので、自分から近づいてしてやる。

 喜んでくれたので嬉しい気持ちだ。


 どうやら彼らはNPCではなく一般のプレイヤーらしい。

 ということは、この図書館は別の街とも繋がっているのだろうか?


 確かにどこの街にもあるとは言っていたし、その可能性は高いだろう、実際ワープ的に飛ばされた訳だし。


 まぁそれは置いておいて、俺は受付カウンターらしき場所に向かってみる。

 司書NPCは何人もいるが、仕事中っぽいので、変な仕事を頼んでしまうと後が面倒そうだ。

 知らん本探せとかクエスト発生したら地獄だしな。


 目視できる場所にカウンターはあったので、俺は早足で向った。


 …そういえば、プレイヤーがいるなら装備の効果とかステータスとか覗いてくるやつ居そうだな。


 というか、さっきのプレイヤーも装飾装備しか見たところ身に着けてなかったし、多分普通に居るのだろう。

 出かける予定なかったから脱いどいたのは正解だったな、微妙に寒かったけど。



「ようこそお越し下さいました。

本日は世立伝承図書館を何にご利用でしょうか?」

「伝承クエストでここに来いと言われました」


 カウンターに着くと、受付をしている女性NPCが声を掛けてきたので正直に答える。

 どうせ辺りの奴等(プレイヤー)は察してるだろうし、このあと何かあってバレると思ったので普通に言ったが、微妙に図書館内はザワついた。



「了解しました、館長に話を通す前にこちらの部屋へどうぞ」


 それを尻目に受付さんはカウンター奥の扉を開き、俺は指示に従って室内へ入った。

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