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精度と憐憫

「なッ───!!」


 直後、叫びと共に右足を出して大きく踏み込む。

 踏み込みは戦闘技能(スキル)の効果で全ステータスを一時的に数倍加させ、ただ一歩で瞬間移動したが如き速度を見せる。


 俺はその勢いのまま前方で転げる獅子へ突っ込み、晒された無防備な腹を斬りつけた。


 両手剣による振り上げの一閃は強力だ。

 技能(スキル)を用いずとも、通常のモンスターであれば倒れるはずだが──風の動き。


 後方へのけ反るように転がる、いうなればバク転の要領で回避行動を行う。

 それと同時に、五体満足かつ怯みもしない獅子の爪が空を裂いた…避けてなけりゃ飛ばされてたか?



「あぶねぇ…コイツタフだし相当速いな?」

「ソイツ首以外まともに入らねぇんだよ、ディア!」

「『大地よ彼の者の足を掴め』【泥沼】!」


 そういうの先に言えよ…と言いたい所だが真っ先に飛び出したのは俺だから目を瞑ってやろう。やさしさ。

 というか、ディアくん行動が的確で早いな。まぁ先に通常を潜った経験があるからかもだが。


 まぁそれはともかく、ディアくんが唱えた先程よりも詠唱の長い魔法は、発動の直後目前に巨大な沼を生み出した。

 既に俺を殺さんと駆けていた獅子は見事その罠にハマり、クラウンのような飛沫を立てながら沼の中に落下する。



「【疾風の速さを矢にゲイル・ファスト・アロー】」


 そしてロビンはそれを的確に狙い、最高速度の矢を放つ。

 空を容易く裂く矢は沈みゆく獅子の頭蓋、額の中心へ吸い込まれるように向かう…が。


 右半身を飲まれたにも関わらず、獅子は冷静に捌く。

 まだ飲まれて居ない左前足を掲げるように突き上げてから振り下ろし、爪の斬撃と風圧によって見事渾身の矢を跳ね返してみせた。



「大道芸かなんかかぁ?」

「チッ、ちょっとAI強化されてるな…」

「俺は【古の墳墓】の通常難易度やってねえからわからん…」


 ロビンの感想に耳を傾けつつ、後方で固まったカリナに一瞬目を向ける。

 弓を構えてるが魔力矢は装填されてない…【必殺の矢(ブラフマーストラ)】狙いか、惜しいな。


 彼女の使う【勝利の弓(ヴィジャヤ)】はロビンなどの使う通常の弓とは違い、『魔力矢』というMPから生成される特殊な矢を通常攻撃とする。


 特殊な矢というのはMPで作られているからという訳ではなく、純粋にちょっとしたホーミング効果と通常の矢より高い威力というのが理由だ。


 とはいえ、通常攻撃を一回するだけで10のMPが持っていかれるというのは非効率的であり、連射を武器にする弓使い的には致命的とも言えうる欠点でもある。


 …というのが一般的見解だが、彼女は「ちょっと雑でも当たるし楽」としか思っていない。



「引き付ける、援護頼めるか?」

「今はパーティメンバーだし、やるってならやる!」

「が、がんばります…!」


 理由は簡単、彼女の狙撃精度が高すぎるから。

 一発一発2秒程度の間隔が必要なのは珠に傷だが、その欠点を補ってなお余りある異次元の精密射撃。


 【必殺の矢(ブラフマーストラ)】をつがえる準備は万端といった様子の彼女を尻目に起きつつ、俺は埋まった半身を抜きつつある獅子に特攻した。


 獅子は「来たか!」と喜ぶように唸り、一気に埋まった後ろ足を引き抜く…抜いてねぇ引き千切ると、俺の元に駆け寄ってきた。


 これがにゃんこなら可愛いもんだが、殺意マシマシ爪硬めなモンスターだから来ないでの一言を贈呈する。



「よッ…こい、せっ!」


 とはいえ俺の思いなど伝わるわけもなく、駆け寄りの勢いを残したままに振り下ろされた爪の一撃を剣の腹で受け止め、ゴリ推しで弾いた。

 腰壊れちゃう…ゲームだから無いけど。


 しかし、弾いただけで獅子は倒れない。

 まあ倒れられたら面倒だし別にいいのだが…なんか二足歩行になった?



「HPを半分削った!拳闘士モードだ!」

「それ先に言えって…ッ!」


 骨格からして変形した獅子は、鋭い爪を隠すように拳を握るとそれを俺に目掛けて叩き込んだ。

 当然避けるが、その拳は避けた場所の地面を見事に穿ち抜いている。ヤバ…当たったら流石に不味そうだ。


 僅かに出てきた不安で後方を見るも、俺以外は別に心配していない様子。



「だって言う必要ねぇからな、こうなったら勝確だ」

「『大地よ彼の者の足を掴め』【泥沼】!」


 ディアの詠唱が終わると、背後へ泥沼が産まれる。

 …それと同時に俺は察した。


 獅子は俺を殴るのに執心なようで、まるで周りが見えていないな…まったく、これ最初に考えたの誰だよ。


 連撃を剣の腹で受け止めてから、最後に放たれる振り下ろしの強力な一撃…それを上手いタイミングで半身避けて躱す。

 殴る対象を失った拳は空を穿ち、バランスを崩し、俺の背後に出来た泥沼へと落下した。



「哀れな…」

「────【火炎球(ファイア・ボール)】」


 聞き手を沼に埋め、よつん這いのような姿勢で引き抜こうとする獅子は、体勢故に弱点たる顔面を無防備に晒した状態となる。


 そんな誰でも倒せるような状態の獅子くんにカリナは【必殺の矢(ブラフマーストラ)】を放ち、直撃。爆裂。

 腕を千切りながら悶えて消火を試みる獅子だったが、数秒後にはあえなく絶命。南無〜


 …内心で「これじゃカリナの精度の話出来んじゃん」と呟きつつ、俺はすぐに倒せたと喜ぶ後衛ズの元へ戻ったのだった。

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