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伝承と

「よっと、カリナ!」

「【火炎球(ファイア・ボール)】ッ!」


 俺がボスモンスターを引き付けている内、彼女が背後から矢状の【火炎球(ファイア・ボール)】を黄金弓より放つ。


 矮小に見える火炎の矢は、先ほどのダンジョンで放ったものと同じく着弾と同時に爆裂。

 今回のダンジョンは先程のものよりも難易度が低いものであったため、数秒とせずに消し炭と化した。


 あ、そういえば話していなかったし、彼女の【伝承】について説明をしようか。

 これは彼女の【伝承技能(スキル)】によって現れた黄金の鎧に内蔵された弓の伝承開放である【必殺の矢(ブラフマーストラ)】を用いた攻撃だ。


 【必殺の矢(ブラフマーストラ)】は、伝承開放時に宣言する…例えば【龍滅の剣(バルムンク)】であれば「砲門解錠」のような開放詠唱を必要とせず、常時開放状態となっている。すごい!


 その効果は『自身の発動するあらゆる魔法を矢として扱い、威力を上げる』というもの。


 これは一瞬「それだけ?」と思ったが、よくよく考えるとAVOの魔法は近・中距離が多いので、全てが遠距離攻撃にできるのは割と強い。

 なお【千の魔法操る手】のような効果はないので、自前で【火属性魔法】を上げている。



「やはり敵を引き付けてくれると【必殺の矢(ブラフマーストラ)】でも当てやすいな」


 もっとも、開放詠唱という弱点が無いぶん効果使用時のデメリットもある。


 通常の魔法発動よりも使用MPが多く、連射が出来ず、発動時の反動が大きいため動いた的には当てづらいなどだ。

 実際、俺がモンスターの動きを止めたタイミング以外では一度も当てられていないと言っていた。



「協力プレイっていうのはそういうものだからな。カリナも誰かとやる時は、仲間の強みを活かせるように動く事を考えておくとやりやすいぞ」

「覚えておこう」


 そこまで言って、ふと「よくよく考えると、この子なんでAVOやってるんだろう」という疑問が脳裏をよぎった。


 別にこれが一般に普及したゲームであれば気まぐれに人気作始めてみたんだろうなぁで終わる疑問なのだが、AVOは需要と供給が死んでいるのでそれはまずない。

 とはいえ、彼女がこのゲームを買うためにサイトへ張り付くような子でない事は短い関わりの中でわかる。


 そうなると貰い物という道しかないのだが…なんかAVO結構プレゼントされてない?

 俺達もそうだし、ランの所もプレゼントだった気がするんだが…そんな贈呈品向け商品には思えんぞ。コンビニの棚にある和菓子のほうが実用性高いからそっちにしろって。


 割と気になるし貰った経緯と聞きたいんだが…まぁ現実について質問するのは野暮というものだろう。

 好奇心を振り払うように頭を振り、頬を叩く。


 ダメだなぁ、疲れて来て雑念が混ざり始めた。

 彼女の時間は惜しいが、そろそろ休みを取るか。



「よし!結構プレイしたし、そろそろ休憩でも──」


────そう思考し、口にした時。

 俺の視界に、突如として通話の画面が展開された。

 通話相手の名はそこに無く、ただ黒い画面の中に受信と拒否のボタンがあるのみ。


 …なんだ、どっかからアカウント漏れたか?

 おかしいなぁ、信頼できる友人と家族にしか教えていないんだが…


 まぁとりあえず切った、怖いし。

 面倒だが後で通話アカウント変えなきゃだなぁ…


────直後、再び通話画面が展開される。

 ので、もう一度拒否を押す。

 すると再び画面が展開され…



「…ジークさん、なにかあったのか?」

「いや何でもない、ちょっと面倒そうなのが…」


 突如として発言を止めた俺へ、カリナが訝しむように問いかけて来た。ごめんね、内情知らないと七割変人だよね…

 ええい迷惑なと内心で吐き捨てながら3度目の拒否を押すも、直後に画面が再展開。


 ぐぬぬ…落ち着け、ソークールソークール。

 クソ、通話の会社め。非表示相手の通話は自動で拒否出来るように設定してくれ…!


 そう思考する内にも、展開と拒否を繰り返した回数が累計で20回を越しはじめる。

 俺の羞恥心とかはともかく純粋に面倒だな…後の予定は削りたくないし、削るのは休みとなってしまう。


 『着信 非表示』という文字の書かれた画面。

 それにうんざりとした気持ちを吐き出すようため息を吐き、諦めと共に俺は受信のボタンを押した。



「誰だ…せめて非通知はやめろ、迷惑電話は───」


『その声はジークか!?ったく面倒な事しやがってっ!』


 俺の訴えを掻き消すように、通話先から男の声が響いてくる。


 いやいや、面倒なのはそっちだろう!散々非通知で通話送ってきやがって…あれ結構怖いんだからな!?

 正直画面先の男を罵倒してやりたいが、通話を録音でもされていると面倒だ。

 青筋の浮きそうな思いをじっと堪え、俺は口を開く。



「…用件はなんだ、何も理由無くかけてきた訳じゃないだろう。無いんだったら切るぞ」


『…待て、お前もしかして状況がわかってないのか?』


「わかってないも何も通話してきたのはアンタだろうが…」


 男の要領を得ない発言に首を傾げる。

 まるで意味がわからんな…何がどうして、俺が疑問を叩きつけられねばならんのだ。せめて俺の質問に答えてからにしろ。



『う、ううん…わかった、説明する。高圧的な態度を謝らせてくれ』


「そんなのはどうでもいい…さっさと用件を言え」


 キレたかと思えば急に静かになり、次は謝ってくる…情緒不安定か?

 まったくもって面倒な男は、「わ、わかった…すまなかった」とテンポ悪く謝罪を口にしてから、ようやく疑問への回答を言い放った。



()()()()()のダンジョン【()()()()()()殿()】が見つかった。どうやらここは、アンタが居ないと挑めないらしい…力を貸してくれ』

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