日記と黄金の鎧
1日目
せっかく月李ちゃんに貰ったので、AVOというゲームをはじめてみた。
将来の自分が「こんなこともあったなぁ」と懐かしむ事のできるよう、ゲームの中で起こった事を残す日記を書くことにする。
また、日記の進め方は私のプレイしたゲーム内日数の累計とした。
今日はまず、レベル上げというものに行こうと思う。
2日目
迷ってしまった。この場合自殺して復活するのが懸命らしいが、自殺はちょっと怖いので、せめてモンスターと戦って負ける形での死亡を待とうと思う。
モンスターの肉はあまりおいしくない。
3日目
モンスターとあまり遭遇しない。
近くにプレイヤーがいるか、もしかしたら街があるノかもしれない。
森の中だとセーブも出来無いので、困る。早く街につきたい。
4日目
現実だと丸一日が経過しているのだろうか。
今日が休みで良かったという気持ちと、せっかくの休みがという気持ちが混じっている。
何らかのダンジョンに入ってしまったが、あまりモンスターと遭遇しない。
かなり強力なモンスターから逃げると、奥の広場で別のプレイヤーが寝ていた。もしかしたら、この数日は彼の数歩後ろを歩いていたのかもしれない。
どうしようかと悩んでいると、近くにある街の人が街に案内をしてくれた。
私は彼を街の人に預け、ログアウトした。
5日目
何日か休んで再びログインしてみた。
最初に災難こそあったが、やっぱりこのゲームはとても面白いと思う。
少し遊んでいると、お使いを何人かにお願いされたのでしっかり渡してきた。嬉しそうなので、私も嬉しかった。
6日目
予定の合間を縫ってゲームをした。
夜はすぐに寝てしまうので、朝起きて一時間程度プレイして学校、その後練習という予定だ。せっかくゲームをやるなら、出来る限り全力でやろうと思う。
何故だか街の人に沢山お使いを頼まれる。頼んでもらえる分には嬉しいが、何かそんなに信頼してもらえるような事はしただろうか?
7日目
やはり数がどんどん多くなっている…モンスター捕獲なども頼まれそうになったが、現状の私は付近のモンスターには敵わないので断った。
申し訳ない気持ちになった。もっと強くなりたいが、普通の街への戻り方がわからない。
レベルが上げられない…
8日目
今日もお使いをやった。沢山の人が喜んでくれるのでとても嬉しい。経験値も貰えてとても嬉しい。
Win-Win-Winの関係。私がたくさん得をしている。
9日目
今日もお使いをやった。そういえば、モンスター捕獲のお願いがあまりない。
断らないで済むので嬉しいが、私が断るから言わないわけではないだろうか。不安だ。
なんでも屋という称号を手に入れ、より沢山のお使いを頼まれるようになった。嬉しい。
10日目
今日もお使いをやっていたら、なんだか凄そうなクエストが発生した。
ので、クエスト先である図書館に行ってみたら、これもまた凄そうなスキルと鎧をもらった。
もらったのだが…鎧が脱げない。
兜は外せるが、それ以外の鎧が脱げない…どうしよう。鎧は金色なので、かなり目立ってしまった。
試しのつもりでモンスター捕獲のクエストを受けてみた。
結論から言って、とても鎧は強かった。
鹿のようなモンスターによる攻撃の殆どが私に通らず10分の1ほどまで軽減され、その僅かなダメージすらも、スキルか鎧の効果の自動回復によって無くなってしまう。
しかし、私にはそれを扱う能力が無い。
純粋にステータス値が足りず、防御こそ出来れど自分からの攻撃は入らないため、結果として捕獲するのに予想を遥かに上回る時間を持っていかれた。
とりあえず、やはりまだ捕獲のクエストには手を出さない方がいいだろうと思い知らされた。
11日目
時間が無くて久々のログインとなったが、やることも変わらず今日もお使いをした。
どうやら近々イベントがあるそうだ。
各プレイヤーのレベルと近いレベルのプレイヤーが集まって戦い、生き残る事でポイントを稼ぐらしい。
予定が空いているようであれば、私も参加したいところだ。
12日目
私と月李ちゃんの予定が丁度合い、イベント当日に参加出来るのが決まった。
今日もお使いをした。
13日目
イベント当日だ。レベル的に私は低レベル帯に分類されるだろう、低レベル帯の優勝を取れるように頑張ろうと思う。
…どうしてこんな事になったのか。
私は今、感情のままにこの日記を綴っている。
あぁ、本当にどうしてこんな事になってしまったのだろう。
私は低レベル帯のイベントに参加したと思ったら高レベル帯に参加していた。
それで、高レベル帯でしぶとく生き残ってしまったかと思えば、4日目に街の人へ預けたプレイヤーが別のプレイヤーと凄まじい戦闘を経て勝利をもぎ取り、私と彼の一対一になってしまった。
何を言っているかわからないと思うが、私もなんでこんな事になってしまったのかわからない。
とはいえ、私が彼に、彼が私に勝てるかはともかく、私対彼の戦闘が先の激戦以上の興奮を視聴者に与えられるかは間違いなく否だ。
私は躊躇なくリタイアを決断した。
何故私は高レベル帯に参加させられたのだろうか?
何か理由があるかと考えれば、真っ先に思いつくのは鎧…というか、それが付随するスキル、伝承スキルだ。
私はこのスキルを持つに値うのだろうか。
手に入れてからずっと、このスキルに振り回されてばかりだ。
一方、上位のプレイヤーを巻き込んで激戦を繰り広げていた二人…ジークとアサヒだったか。
二人は自分のスキルに振り回される様子などなく、むしろ自分の手足の如く使いこなしている。
だというのに、わた
びっくりした。そういえばそうだ、ジークは私がこの街の人に渡したのだから、彼もこの街にいるのも道理というものだ。
突然やってきたものだから、私がリタイアした事に激怒して襲いに来たのかと思ってしまった…そんなわけないというのに。
とりあえず、今日は休もうと思う。
────強くなりたい。
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