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β版イベント

『───ルールはさっき言った通り生き残りを目指すバトルロワイアル、一応宣伝も兼ねてるから芋っちゃダメだよ!

積極的に他のプレイヤーを倒してね!

それじゃあ、10秒のカウントの後に移動・攻撃不可態を解除して戦闘開始だから切り替えてね〜!』


 映像が流れ出すと共に響いたのは、やけに楽しげな解説者の声。

 画面は街を映す上空カメラと、準備を整えるプレイヤーを映すカメラで交互に切り替わり、現場の緊張感を画面越しに伝える演出がなされていた。


 そして、街の真ん中に立つ巨大な塔の上に表示されたカウントダウンの表示が0になると…


『試合開始────』


────轟く光と破壊音。

 街の家屋数十棟を躊躇無く吹き飛ばす衝撃は、イベントに参加していたβテストプレイヤー50人を一度に消し炭と化させた。


▽▽▽▽



『とんでもない技やなぁ』


 画面を見ていたタケルがそうポツリと呟く。

 ディナは予想外のタイミングで起きたそれに驚愕して目を見開いて固まっている…訳ではないな、アレは考えている時の顔だ。



「破壊力はいいんだが、初手の牽制にしては派手すぎる気がするな」


『同意ですね、あれだと危険に感じたプレイヤー同士が手を組んで先に潰し来ますよ』


 彼女は目を見開いたまま画面を見ながら相槌を打つ。

 そして、そのまま続けて呟いた予想の通り、数十人のプレイヤーが徒党を組んで破壊の源らしき場所に集い、そこに居た小さな人の影に───



「──ってオイ」


▽▽▽▽


 影に剣士が斬り掛かる。

 直前まで一切微動だにせず立ち止まっていたソレは、瞬間一気に人の隙間を駆け抜けた。

 ただ駆け抜けたのではなく、襲いかかった剣士5名全員の首を落としながら。


 そして更に1秒後。

 動揺すらなく、現状を把握できずポカンとしていた魔法職全員の首を一気に落として、背後から迫った重戦士の脇腹に剣を突き刺す。


 首を落とされたプレイヤーは急所判定攻撃によってHPを全損して粒子化。

 重戦士も急所判定攻撃を喰らったものの、装備効果による防御力の上昇によって一撃死は免れた。


 もっとも、今(急所)を落とされたのだが。

 背後で待機していたプレイヤー達は「これはマズイ」と四方八方に駆け出したものの、ここに寄ってきたのが運の尽き。


 ソレ──アサヒは影から飛び出すと、壁面を駆けて右側へ逃げたプレイヤーの前に回り込んだ。

 そして、脇に挿した2本目の剣を握って双剣術の構えを取り、5秒しない内に右へ逃げたプレイヤー全員の首を刈って、今度は左側へ駆け出す。


 回り込まれた右側はいちおう応戦(あまりにも無様だったが)という形を取れていたものの、背後から襲いかかられた左側は悲惨だ。2秒と持たなかった。


 そして、アサヒは付近にいた敵を潰しつつ街の中心に立つ塔へ向かい、駆けていった。


▽▽▽▽



「お前じゃねぇか掻き回してるの」


『というかβテスト時点で届いてたなら教えてくださいよ!』

『あはは、ごめんね。買えないと思っていた物が手に入ったから、気分が上がって忘れてたんだ』

『舐めんなや』


 画面上のアサヒは塔の頂上に辿り着くと、何かを呟きながら剣を振りかぶり、先程と同じ光を一本目の剣から放った。おそらくは何らかのスキルやら魔法やら何やらなのだろう。

 リチャージタイムは2分から3分…発動条件は何かあるのか──じゃないわ。



「よし、もう満足だ。大体わかった」


『うん、そうか』

『あ、私はこのまま見てますね』

『俺もそうします〜』


 俺はアサヒに声を掛けながら、指先で画面を掻き消した。

 見続けている二人は、暗に俺の判断に委ねると言っているのだと判断しておこう。



『実際のプレイ映像を見た感想はどう?』


「大方は予想通りって感じだが…面白そうだ。

前作と同じで地形破壊が簡単に出来そうなのも良い」


『うん、僕もやってみて気に入ってる。爽快感凄いしね』


「その他で、なんか気になった所とかは?」


『あぁ、そうだね。実際プレイしたのは僕だけだし…うん、バグも無く、必須スキルとかも特に確認出来なかった。

PvPはまだ完璧とは言えないけど、今後の調整次第で完璧になる可能性があると思うよ』


「…ま、()()()()()みたいな所あるしな」


『あはは、そういえばそうだった!』

『あっ!強そうなプレイヤーが光に呑まれて居なくなった!』

『あとちょっとやったんになぁ』


 どうやら動画の方は割と盛り上がっているらしい。俺も後で続きを見ておこうか?

 …まぁ、とりあえずそれは置いといて。



「とりあえずゲームの方は置いといて、お前なんか言おうとしてたよな?」


『いや?特には何も無いよ』


「いやいや、絶対に何か隠してるだろ」


『隠してないよぉ。まったく、濡衣を着せないで欲しいなぁ!』


 白々しく言い放つ彼女。

 いつもの固まった笑顔ではなく、どことなく感情が感じられるソレからは、明確に『嘘』や『隠し事』の存在が読み取れた。


 「えー、うっそだぁ!」と言いたいのは山々だが…まぁ、別に重要な事でも無さそうなだし触れないでおく。

 隠しておきたい事に、無闇に触れるべきでは無いしな。



「じゃあいいや。

このアヴァロニカ・オンラインは俺的には採用内定なんだが、3人は──」


『『『採用』』』


「だろうな。そんじゃアサヒ、郵送頼めるか?」


『お安い御用だよ。

明日の14時くらいに自室郵送でいいよね?』


「大丈夫だ」


『私も明日なら大丈夫です』

『俺だけ20時辺りで頼める?』

『了解。正式サービス開始は明後日の昼だけど、そのタイミングで集まれる人は情報共有したいから───』


 メンバー達と明日以降の予定を話し合いながら、他のゲームに関する情報も交換して、俺たちは通話を終えた。


 はぁ〜っ!ゲームやり詰めでちょっと疲れた!

 早速明日の昼まで寝よ!


 そうして俺は頭に取り付けたバイザーに似た機械を外して傍に置き、そのまま潜り込んだベッドの中で眠りについたのだった。

ブクマ・ポイント・いいね・感想等いただけると幸いです!モチベが上がります!

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