表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/53

作戦と業火

────ジークとアサヒ、互いの視界を解き放たれた黄金の爆光が包み込む。焦熱を含む破壊の極光により、両者の視界は一時的に消し飛んだ。


 両者間レベル差は3。

 しかしジークは足りないステータスを上昇効果(バフ)や装備によって補っており、現状でステータス差は皆無に等しい。

 ステータス、視界状況、2人の状況は殆ど同じだ。


 しかし、両者で決定的に異なる事が一つ。

 それは【勝利の剣(エクスカリバー)】による攻撃で身を焼かれているか否かという単純な答えだ。


 そう、今回ジークは【強靭なりし表皮インヴァリド・エピドロミス】を使用していない。


 【強靭なりし表皮インヴァリド・エピドロミス】の効果は、正しい数値に表して70%の被ダメージ減少という極めて強力なもの。

 普通に考えて、これを発動せずに聖剣開放の一撃を受けるのは自殺志願という他ないだろう。


 

────しかし、ジークは生きていた。

 【古の光(アンティファ・ルクス)】の持続消費MPと彼のMP持続回復量が釣り合ったのと同じ原理ではない。


 減ってはいるのだ。

 しかし、その減少値があまりにも微量で、彼の持つHP持続回復によって既に回復されつつあるだけ。


 そんな状況に対し、アサヒも流石に驚愕の表情を浮かべざるをえない。

 しかし同時に、悦びの感情もまた内心に湧き出る。



「ふ、ふふ…あははははははッ!!

ジーク!キミは、キミは本当に面白いなぁ!!

防御の技能(スキル)も使わずにこの技を防ぐなんて!!」


 彼女はこれまでの笑い声とは異なる心からの笑いと共に、驚愕の不意を突いたジークの一撃を回避する。

 そして同時に思考する。

 ジークの持つ伝承の仔細について。


▽▽▽▽


 …とか考えてるんだろうなぁ、アイツ。

 こんにちは、アサヒに想定外の不意打ち決めようとしたのに回避されたジークです。


 いや、普通入るだろうアレ?

 情報処理能力が規格外にも程がある、折角【強靭なりし表皮インヴァリド・エピドロミス】でブラフを張ってたのに…。



「ほらジークッ!もう終わりかな!?伝承の開放はしないのかいッ!?」

「うるせぇ!タイミング無いだろうがッ!」


 繰り返し放たれる強力な剣閃を躱し、受け止め、合間に蹴りを入れるなどして距離を取りつつ、反撃のタイミングを伺う。

 それと同時に、逆転の奇策を練り始める。


────俺の伝承【龍滅の勇者(ジークフリート)】は回復能力が無い分防御性能がかなり盛られていたらしい。


 AVOにおいて、伝承と呼ばれるものは四種類に分けられる。

 それはそれぞれ伝承クエスト、伝承の頁、伝承技能(スキル)、そして伝承そのものであり、同時にそれらは与えられた一人から移る事は無い。


 条件達成によって伝承クエストが発生し、伝承図書館で伝承の頁を会得、そして会得と同時に伝承が宿り、それに伴って伝承技能(スキル)を習得する。


 つまり、受け取った時点で自身が伝承の英雄、俺の場合ジークフリートになった訳だ。

 そして伝承は、宿った時点で様々な効果を自身に与てくれる。


 その内容は開示されていないので俺も全ては知らないが、先程【強靭なりし表皮インヴァリド・エピドロミス】で強化された状態でダメージを受けた時、その内1つの効果内容が新たにわかった。


 おそらくは、技能(スキル)による被ダメージ減少とは別で処理される被ダメージの()()

 あの時のダメージ、70%減にしても弱すぎたからな…


 大熊蜥蜴の鱗鎧の固有スキル【魔獣なりし聖獣】も効果してくれたであろうところもちゃんと考慮しての計算だ、安心してくれ。

 聖剣から出るビームだからな、多分聖属性だろう。


 その他に俺が知っている効果には、モンスター…特に竜への特攻能力と、部位欠損・急所判定攻撃の無効化がある。

 運営のイメージするジークフリートは魔物退治の専門家か?


 特攻のおかげでクエスト処理が格段に楽になったのでそこは万々歳だが…今相手アサヒだからな。

 一切特攻は刺さらないし、そもそも龍滅の剣(バルムンク)もまた両手剣なので攻撃を当てる隙が無い。


 当てる隙を作ったとして、すぐ躱されるのがオチだろう。

 というか、そもそもアイツに俺お得意のチクチク戦法効かないし。削りきる前に回復されるし。


 やはり一撃必殺を狙うしか無いか。

 そうなれば、龍滅の剣(バルムンク)の伝承開放をアサヒの伝承開放のタイミングに合わせ、伝承開放攻撃中の無防備状態を叩くのが一番。

 無防備状態をより強固にするためには…あれでいくか。


 ようし、完璧だ!上手い作戦が見つかったな!

 あとは勝利の剣(エクスカリバー)開放前後に被弾をできる限り避けて、作戦をそのまま実行に移すのみ!


 予想の情景を強く想起し、ふと笑みが溢れる。

 そして、それを見た彼女もまた頬を釣り上げた。



「はは!何か思いついたみたいだねッ!!」

「あぁ、もっと楽しませてやる…よッ!」


 感情が昂った時、剣に力を込めすぎて胴に隙ができる癖…何度言っても治らないからな、有効に使わせて貰おう。


 胴にこれまで以上の力を込めた蹴りを叩き込む。

 目算10メートル程度の距離…俺なら2歩、アサヒなら3歩といった所か。

 時間稼ぎには十分だな。



「『ネロ』────ッ!」


 瞬間、大地に超大型の魔法陣が刻まれる。

 【七冠の災厄(プーラ・インピエタス)】によって行使される、本来の魔法位に換算すれば【火級】【大火級】【火炎級】【豪炎級】の通常位に属さない【神炎級】に属する『ネロ』の名を冠せし大魔法は、燃料となる薪や樹木すら要すること無く、裸地と化した大地に国すら燃やす業火を顕現させた────!!

ブクマ・ポイント・いいね・感想等いただけると幸いです!モチベが上がります!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ