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第一回公式イベント

 さて、光が開けた先は…路地裏かな?

 早速イベントで先行実装となったマップを表示・拡大して現在地を確認する。


 今回転送されたのは、エリア中央に山を配置したタイプの仮想都市フィールド、その路地裏であると確認できた。

 まぁ、他に種類があるのかは知らないが。


 高台があると反対側に行きづらくなるな?

 そんでもって広域を破壊できる魔法とかがあれば話は全く別、盤面を片手間に掌握できる訳だしねぇ…


 つまるは、歩兵不利魔法職有利になる地形って訳だ。


 …本来は、だが。


────瞬間、山の先で極大の金光が弾けた。

 同時に、フィールド内に残るプレイヤーの数を示すカウンターが『4432』から『4113』まで減少する。

 この破壊力、即時に取った行動。

 輝きの色こそ違えど、βイベントを見た者がそれを間違えるはずがない。



「やっぱり開幕と同時に仕掛けたな、アサヒ!」


 彼女が行動を始めたことは、開幕の鐘が鳴ったに等しい。ここからは一気に盤面が動くな…

 なんなら、既に近くから金属が同時に打つかり合う音が響いている。


 さてさて、俺も行動しないとだな。

 鑑定系技能(スキル)によって詳細を勝手に公開されないよう、解除していた各装備を再度身に纏う。


 このゲーム、おそらくは装備に馴染度的な数値が設定されているらしい。

 最初は微妙に硬くて動きづらかったというのに、いつの間にやら服の一つも纏っていないと錯覚するほどに邪魔さを感じない。


 まぁそんなことは置いておいて、俺はフードを顔が見えない程度まで深く被る。

 すると【存在抹消】の戦闘技能(スキル)が発動し、俺の感知率がガクンと下がった。


 この感知率というのも詳細が確認できない隠しステータスの一種だ。

 感知率が低い場合、一般のプレイヤーとモンスターの感知系技能(スキル)と実際の目視、どちらにも作用して気付かれづらくなり、高い場合はその逆に作用するというものらしい。Wiki参照。


 【存在抹消】は各種場合に応じた感知率低下の技能(スキル)を多分全種集めた時点で統合された【存在隠蔽】の上位スキルだ。

 発動条件がよくわからなかったが、フードを被ると確定で発動するとこの前気づいたので活用させてもらう。


 そんなわけで、狙うのは暗殺だ。


▽▽▽▽


「『風よ火よ、集いて猛れ』【火炎業球(フレイム・ボール)】ッ!」

「あぶっ──【魔力の盾よ(マナ・シールド)】ッ!

炎よ宿れファイア・エンチャント】【大地を駆ける(グラウンド・ランナー)】ッ!」

「ぐぅっ!?畜生ーーッ!」


 剣士は魔法使いの一撃を1つの魔法技能(スキル)を持ってそれを防ぐと、大技を放って疲弊した相手の隙を突いて2つの魔法技能(スキル)を発動させながら、突進。


 隙を狙われた事で、走力に特化してそれを強化する技能(スキル)に対応しきれず、魔法使いの男は敢え無く撃沈。

 光の粒子となって消えてしまった。



「ふぅ…ぐッ!?」

「お疲れさま、俺のポイントになってくれ」


 さて、そんな訳で勝ったほうを背後から狙い撃ちだ。

 鎧の隙間に切っ先を突っ込んで両断する。

 そして上体は地面に落下すると同時に粒子と化した。


 これで12人目だな。

 大概のプレイヤーは、感知に反応無くて目視も出来ない相手が襲ってきたら対象出来ない。

 それもプレイヤーを一人退けた直後も直後、特に気が抜けてるタイミングだ。


 正直自分が狙われても対処できる気が…しないとは言わないが、ボーッとしてたらキツイな。

 実際HGSOでその戦法喰らってアサヒに滅茶苦茶やられたし。


 そんじゃ、次の人探しに…あ、山向こうがまた爆発した。2314が2309になった。

 20分経過したし、そろそろ山の頂上にいてもおかしくないと思ったが、他のプレイヤーに阻まれてるみたいだな。


 いいぞ〜、俺がプレイヤー狩りつつ向かってる間は等間隔でランダムな方向に爆発かます固定砲台にしないよう押さえといてくれ───おっと。


 山向こうを眺めつつそんなことを考えていると、背後から人の気配を感じた。

 それと同時に振るわれた剣…いや、刀か。その一撃を半身になって回避しつつ、先程まで向いていた山のある後方へと飛び退く。



「当てた思うたんじゃけどなぁ、流石はジーク、アサヒとタメ張る実力の持ち主じゃあ…」


 長く癖毛の頭髪を首元でまとめた袴の男は、呟きながら地面に力強く斬りつけた刀を持ち上げる。

 …石畳の地面にヒビが入ってる、STRをかなり強化してるみたいだな。



「面識は無いよな、名前は?」


 問いかけつつ、小声でいくつかの魔法技能(スキル)を発動する。

 AVOで真っ向から対人するのは初めてだし、せっかくなら楽しみたいところなんだが…まずはアサヒと遊びたいからな。

 挑んでくれた事は嬉しいが、とっととご退場願おう。



「わしの名か…?ククッ、わしの名は()()ッ!アンタはこの名を聞いて冥土に──」

「そうか、すまんが別のタイミングでまた会おうな」


 声量を抑えながら【光は身体に(ルクス・コーポレ)】と【栄光は掌に(グロリア・パルマ)】、【勝利を剣にヴィクトリア・グラディウス】を発動。

 常時発動しているDEXやAGIを強化する戦闘技能(スキル)各種と、踏み込みと同時に発動した【全霊の踏み込み】によってそれらを含めた全てのステータスが強化され、更には名乗りの不意というタイミング。

 全てが彼にとって不利に働く、俺にとって絶好の状況。



「──なんじゃあああああああーーッ!?」


 絶大なバフの込められた両手剣による一撃は、リュウと名乗った男を見事に両断した。

 同時に、街道へ響く彼の絶叫。


 ごめんね?今先急いでるからさ…?

 とりあえずは詫びとしてフレンド申請でも…あ、仮想都市フィールドだと出来ないのか。

 へぇ〜知らなんだ…じゃあ、イベント後に会えたら送る事にしよう。


 …タツとやらはどの街にいるんだ?

 まぁいいか!寄り道しつつ先急ごっと。


 戦闘行動に移ったからか、いつの間にか捲れていたフードを再び被り直し、山に向かって路地裏を進んでゆく。


 背後、タツのいた場所を風が吹き抜けた。

 それはまるで、彼の哀れさを表しているようで…ごめんね?

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