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アキと別れ

 カウンドダウンが終わり、足元から体が粒子になったかと思えば、次の瞬間には見覚えのある墓地の風景が視界に飛び込んでくる。


 背中側に視線を向ければ1時間程度前に開いた【古の墳墓】の入口…つまるところアナウンスされた通りに移動させられた訳だ。


 折角の転移なら始まりの街にでも飛ばしてくれれば楽だったが…それは贅沢か。



「ラン、そろそろ悪状態(バッド・ステータス)解除されるんじゃないか?」

「ちょっと待って下さい…あー、そうですね。あと一分くらいです」


 となればランとはそろそろお別れだな。

 ランだって俺の背中にずっと居たい訳じゃないだろうし、俺にも予定がある。


 まずは現状で受けている分のクエストを消化してから、伝承図書館でゲーム内の設定をある程度調べたい。

 どうやらこのゲーム、隠してあるだけでストーリーがあるみたいだからな…五大神王とはなんぞや。


 俺は近くの墓石にランを下ろしてから、空に円を描いてステータスを開く。

 早速ディナからメッセージが飛んで来ているが当然無視だ、気にしすぎなんだ彼女は。もっと気楽にね。

 そしてフレンドの申請をランに送った。



「えっ、フレンドなんていいんですか!?」 

「ん?まぁ俺は気に入ったら誰でも送るからな。そんなにありがた〜く受け止めなくていいぞ」


 それこそディナは知り合いにしか送らないし、タケルはメンバー以外送ってないはずだ。

 アサヒのフレンド事情は知らんなぁ…でも割と人見知りだから少ないかもしれん…まぁそんな事はどうでもいいのだけども。



「なんかあった時に誘うくらいはあるかもだが…まぁ、そっちから誘ってくれた方がいいな」

「では、また何か面白いイベントでもあったらお誘いを…あ、状態戻ったみたいです!」

「それはよかった、じゃあ早速アイテムを───」


 瞬間、僅かに地面を踏みしめる音が響いたと同時に俺とランの間で疾風が吹き荒び、駆け抜けた。


 野生のモンスターかとも思ったが、モンスター出現時の表示が出ないし、初撃を感覚外から行わなかった事も謎。

 そして何より、初心者向けのエリアであるここに、それなりに高レベルであろう俺が対応できない速度のモンスターは出現しないであろうという事。


 おそらくは俺と同等以上の高レベルプレイヤー…というか、ほぼ絞り込めるな。



「よぉラン!遅くなったな!」

「ア、アキ…急に飛び込んで来ないでよ、びっくりした…」


 驚愕のあまり地面に座り込んだランを覗き込む黒髪の少女…アキは、ニヒヒと笑いながら楽しげな大声を上げた。


 …女だったのか、アキ。


▽▽▽▽



「俺はアキ!β版からAVOはやってる!よろしくな、ジーク!」

「知ってもらえてありがたい限りだ、よろしく」


 差し出された彼女の手を握り返すと、彼女はまたニヒヒと笑う。楽しそうでなによりといったところだな。


 というか、β版からやってたのか。

 それならランが言っていた強さにも納得…というか、思い返せばアサヒの無双動画と化してたβイベントに映っていた気もする。


 記憶にあるって事は、初動から注目されていて映されていたプレイヤーか、アサヒに瞬殺されてたプレイヤー数名のどちらか。

 9割方で前者だろうな。



「当然知ってるぜ!正式版でも俺が欲しかったってのに、β版移行者の制限で取れなかった【世界最速(ワールドレコード)】…それを取ったのがアンタだからな!」

「へぇ、制限なんてあったのか…悪いことしたな?」

「悪いなんて思わなくていい!伝承も称号も早い者勝ちだからな!」


 ランの知り合いがマナーがなってそうな人でよかった、こういうのめっちゃ因縁付けてくるやついるからな…変な輩じゃないのはありがたい。



「だけどイベントでは絶対に誰にも負けねぇ!当然アンタにも、アサヒにもだ!」


 彼女はそう宣言して笑いながら胸を張り、ドンと俺に指を突き指す。それに伴い、彼女の胸もバルンと揺れた。


 …なんなのだろうかこの二人組は。

 ランといい彼女といい、やけに軽装だ。

 というか、むしろランより彼女の方が軽装じゃないか?


 ランは最低限胴回りをほぼ貼り布みたいな服で覆っているが、彼女に至っては胸元の鎧以外肌色だ。つまり腹丸出し…寒くないのか?


 まぁ他のゲームにもこんなのはいたし、目のやり場に困るっ!…みたいな事は無いが、常識的にあんまり見ないようにはする。


 にしても、大きく出てくれたものだ。

 俺にもアサヒにも負けない…こうやって目の前で宣言したのなんて、片手で数える程度しかいた記憶がないな。

 宣言してくれると、こっちも俄然やる気が湧いてくる。



「いいぞ、その宣言受け取った。

お互いどの組分けになるかまだ分からないが、同じランク帯だったならお互い本気で、だ!」

「ニヒヒッ!ノリいいなアンタ!おう!本気で、だな!」


 互いに笑いながら見合う俺とアキだが、互いにぶつけているのは殺意とも言える本気の闘志。


 彼女の意思に則って、俺は『サバイバル』の会場でアキを見つけたなら、本気で殺しにかかる。

 ああそうだ、俺はアサヒも殺し、タケルもディナも他のプレイヤーも全員殺して、必ず一人で生き残り、優勝の座を奪い取る!


 いいじゃないか、面白い!だんだんと明確な形が見えてきた!

 そうだな、アサヒを倒すだけじゃ面白くない!

 本気で目指すというのなら、俺が目指すのは完全勝利だッ!!


 元よりの目標は、今ここに確かな形を成した。

 あとはそれを掴み取れるよう、俺に出来る事をやるだけだ。



「っと、ジークが面白いヤツだったから目的すっかり忘れてたな…ラン!」

「げっ、こっちに意識が戻ってきた…」


 今後の予定を脳内で組み直していると、急に何かを思い出したアキが、静かに逃走を始めていたランに声を掛けた。

 「げっ」は流石に可愛そうだろう…多分。


 しかたなくといった様子でトボトボと戻って来たラン。

 それをアキは一切の躊躇なく首根っこを掴むと、無理やり引き寄せ、荷物でも運ぶかのように小脇に抱えた。


 話に聞いた通りの傍若無人だな。

 ランは諦めているようなので、俺から言う事はない。

 可愛そうだとは思う、最低でもさっき「げっ」と言われたアキよりは。



「さっき新しいダンジョンを見つけた!フレンド置いてきたから、アイツが死ぬ前に早速行くぞ!」

「えぇ!?ちょ、ちょっと待っ────」

「じゃあなジーク!俺以外に殺されるなよっ!」

「お前もな〜」


 数秒とせずに二人の姿は小指の先程に小さくなった。

 最初に遭遇した時点で察していたが、アキはDEXをかなり強化してるみたいだな。

 否応無しに連れて行かれたランの虚しい叫びが墓地に響いている…あの速度から落ちたら最悪死ぬもんな。


 というか、普通のことのように流していたフレンドもご愁傷様って感じだな。

 誰だか知らないが、冥福を祈っておこう。


 そうしていつの間にか一人になっていた俺は、早速イベントに備え、レベル上げやらに向かったのだった。

ブクマ・ポイント・いいね・感想等いただけると幸いです!モチベが上がります!


〜おまけ〜

ジーク「なんで二人共薄着なんだ?」

ラン「…ローランは装備を着なくても大丈((」

アキ「アタシの趣味だ、いいだろう?」

ラン「なんで自分から性癖暴露するの…?隠そうとしたんだけど…?」

ジーク(俺じゃなくてアタシって言っている辺りマジだな…)

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