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ボス部屋と違和感とラスボス

 大扉の先、ボス部屋と思しき霊廟は扉に見合った広さの空間になっていた。

 高さもそれなりだし、彫像的な壁面の彫込は足ぐらいなら固定できるだろう。立体的的に戦えるな。


 ゲームのボスは基本巨大だ、それに対応して優位に立ち回るためには空間の利用も考える事が大切…になる事もある。


 正直小手先の技みたいなものだな。

 インフレが進むとあんまり使わなくなる…というか、使う暇が無くなる。回避に使うかな?程度だ。



「ランは普通のほう挑んだ事あるか?」

「一応…その時は、ここに血冠腐死王ブラッドクラウン・ゾンビ・キングっていうのがいたんですけど…」

「通常とボスは違うって事か」


 名前に血冠(ブラッドクラウン)は必要なのかという疑問はさておき、ここで立ち止まっていても埒が明かない。

 周囲を警戒しながら奥へと進んで行く。


 …そして1分程歩いて、入口から見ておおよそ真逆の位置にまで辿り着いてしまった。

 なんだこの無駄な部屋は。


 当然ながら部屋の中央まで行ったりもしたが、ボスが出現する気配は無かった。

 魔法技能(スキル)で壁に攻撃してみたが何も起こる事はなく、こうして真逆の位置に設置されたあからさまな大理石の扉の前まで辿り着いた訳だ。



「つまり、これ普通ダンジョンの続きって事だな?」

「そういう事になりそうですね…

思い返してみれば、あのボス『我が墓を荒らす不届き者よ、それは我が宝物を狙っての狼藉か』とか言ってた気がします」

「なるほど、シチュエーションは理解できたな」


 運営はダンジョンを盗掘家(トレジャーハンター)VS古代王のゾンビという物語をモチーフに作ったのだろう。


 通常ダンジョンの事は知らないが、もし今回と全く同じ作りだったとすればあまりにも簡単すぎる…いや、初心者向けだし普通に簡単にしてあるのかもしれないな?…イキるのやめとこ。


 とりあえず、通常の方では王を倒して宝に辿り着く直前までの物語だと考えられる。

 そして『異』のダンジョンでは、最後まで辿り着けたプレイヤーにその続き…物語の終わりへ挑戦させる訳だ。


 各所…特に伝承関連で物語を混ぜてくる運営らしいじゃないか、悪くない。

 ランに視線で確認を取って扉を開く。


 ラスボスは宝の間に仕掛けられたトラップかな?それとも古代の力で動くガーディアン?


 開いた扉の先には神殿のような優美さと静けさを持つ回廊が広がっていた。

 俺達が今出てきたのはその中央…おそらくは魔法かなんかの設定なのだろう、ダビデ像の様に雄々しい2人の彫像が抱えるのは扉から先程の空間が覗けるものの、後ろには部屋が接続されていない。


 そして10秒もすると勝手に扉は閉まり、開てもその先に空間は広がっていなかった。


 おそらくは、回廊の四方ある扉のどれかが正解の扉で宝物庫に繋がっているが、それ以外は出口かはたまた地獄か何処か、みたいになっているんだろう。


 予定じゃ入ってそのままボス攻略の予定だったのに、やけに遅れてるな?まぁ別にいいが。

 さてさて、ヒントも無しにどう解くか…



「俺の記憶が合ってれば右前方の扉です。

ゾンビキングが『左手を掲げる石像が向く先に終わりが待つ』と言ってました」

「…お前記憶力良いな?」

「うちの人みんな得意なんです」


 …せっかくなら、後で通常ダンジョンもクリアしておこうか。

 物語を理解してないのに全クリ、宝物ゲットでさようならは、少し運営が哀れすぎるだろう?


 他に当てになるような物もないので、ランの言うとおりに右前方の角に配置された扉を選んで開いた。

 こちらもまた見事な彫込がされており、これは…エジプト的なアレだろうか?


 このダンジョン、言及せずにスルーした入口はイギリス的な墓地が配置されており、中はカタコンベの様なデザインがされていた。


 しかし、ボス部屋の入口は何故かアステカ的な壁画の彫込がされていて、更に中はカタコンベとはまた別な空間…近いのは中国の霊廟か?

 そこに似た雰囲気を感じた。


 それに、そこを超えた先はギリシャの神殿や彫像が配置されていて、最後はこのエジプト…あからさまに滅茶苦茶だ。


 デザイン担当の気が狂っている可能性を考慮せずに考えれば、何らかの意図があるとしか思えない。

 結局、俺にその意図はよくわからないのだが…


 まぁいい、これを機会に調べてみるか。

 折角街間共有の巨大図書館がある訳だし、それでわからなかったにしても、スレで質問すれば返答が来るだろう。たぶん。



「さて、今度こそラスボスだ。気引き締めて行くぞ!」

「はい!」


 エジプト壁画の扉が開く。


 直後、視界に飛び込むのは黄金で作られたレンガの壁と、世界各地から集められたような刀剣類。

 地面にばら撒かれた見覚えのない型式の金貨や銀貨。


 まさに宝物庫といった景色を瞳に写したと同時に、体が勝手に動き出した。

 どうやらムービーが始まったらしい。


 金銀財宝の海に俺は飛び込むと、ジャラジャラと無造作にそれを鷲掴みにして掌から零す。

 黄金の首飾りを掛けたり、美しい造形と装飾の指輪を付けたり…やりたい放題だな?


 しかし、そんな自由も終わりを告げる。


 同じく操られているらしいランが、宝物庫の最奥に佇む巨大な厨子を開き、静かな眠りにつく黄金の棺を指した。おそらくはアレが狙いなのだろう。

 体はそれに頷くと、その棺を運び出そうとでもしているのか、勝手に棺に近づいてゆく。


 棺の近くには2つの巨大な黄金立像がそれを守るように槍を掲げ、腰には剣を携えてて佇んでおり、俺はこの後に起こる事を察する。


 そして、俺達の手が棺に触れる────瞬間。

 槍が天から振り下ろされ、黄金で出来た地面を抉った。


 驚いた様子で体が飛び退くと、槍の主たる立像は音を立てて動き出す。

 目に全身を包む黄金では無く、盗掘者を射殺さんという紅蓮の光を灯らせて。



「っ、ジークさん!もう動けます!」


 破壊音響く宝物庫の中、ランは精一杯の声量でそう叫ぶ。

 それを聞いた俺は、頷きながら戦闘に邪魔な首飾りや指輪を外し、付ける為に外された籠手を装備欄から装備し直した。



『───王ノ墓ヲ荒ス者ヨ、貴様ラニ慈悲ハ与エラレナイ』

『尽ク無慈悲ニ、冷酷ニ、残虐ニ殺シテクレヨウ』


 立像は鋭い眼光で睨みながら語る。

 王の墓…つまりあのゾンビはここの主じゃ無い訳だ。

 精々が守護者とか墓守とかで、あくまで(キング)は種族の名前…凄まじく雑な引っ掛けだな?


 さて、殺すと宣言されてプレイヤーな俺は別段「殺さないで」と泣き喚く気は起きないが、あえて殺されてやる気は毛頭ない。

 殺される前に殺してやろう。



『ワールドアナウンス:プレイヤー名『ジーク』と『ラン』が、古の墳墓・異のボス『神王の墓守・黄金立像』と遭遇しました』


『アナウンス:扉がロックされました。

『神王の墓守・黄金立像』を倒す事で解除されますが、ロックされた状態でHPを全損すると、通常よりも重いデスペナルティが発生します。


発生するデスペナルティ

・現実時間【3日】ログイン制限

・ゲーム内時間【1日】ステータス半減

・ゲーム内時間【1日】経験値会得不可

・ゲーム内時間【1日】行動制限(始まりの街)

・バッドステータス【神王の呪い】付加(永続※)

※条件達成によって解除されます』


 ニッと笑い、取り出した両手剣を目前の立像へ向ける。

─────さぁ、攻略開始だなッ!!

ブクマ・ポイント・いいね・感想等いただけると幸いです!モチベが上がります!

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