プロローグ
────笑っていた。
轟々と滾る神炎の中、男はその手に剣を握り締めて、中天に座す人影を見ながらただ笑っていた。
人影はドレスのような服に鎧を纏う少女。
彼女もまたその手に剣を握り、笑いながら大地に男を見て笑っている。
他社から見て、これは緊迫した場面だ。
二人もそれを理解していないわけではない。
だとすれば、何故二人は笑っているのか?
この命と命が鎬を削る戦場の中で、何故彼ら二人だけが笑みを浮かべて相対するのだろう?
『────【剣身解除】』
そう乙女の声が響けば、男の剣は崩壊する。
割れるように、溶けるように、握る宝剣は12の欠片に別れて崩れ落ちる。
『────【砲身開放】』
次に言葉が響くと、崩壊した欠片は互いが互いを守るよう重なり、菱型の空洞を有する筒を作った。
『────【砲剣固定】』
3度目の声が響き、その筒は男が握る柄に融合するよう重なり、固定される。
崩壊した剣は、まるでそれが元の形でのあるかのように異形の剣へと変化を成す。
そして男女は、浮かべる笑みを更に強めた。
「聖剣極光─────」
────さて、何故二人が笑うのかという話だったか。
「砲門、解錠─────」
その答えはとても簡単だ。
この戦場がゲームの中にあるものだから。
今、互いの握る必殺の開放を宣言する二人は自身の命、その一切を投げ出す事すら辞さない。
二人は本気でこのゲームを楽しんでいる。
彼らの精神は異常と言って何の問題もない。
むしろ、ゲームだからと死を一切意に介さない人間を正常と叫ぶ方が異常だろう。
そんな異常者二人が、何故この戦場で相対したのか。
その話は、2週間前にまで遡る──────。
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