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ラストスパート(17)

 恵は加速すると妃美香の右側についた。


「神沢!」

 

 恵が叫ぶ。妃美香はその声に反応することもなく、まっすぐ前を見て走る。恵の加速を打ち消すようにすこしずつ速度を上げる。


 顔色一つ変えない妃美香。まるで底が見えなかった。 


 頭一つ恵がリードする。恵のすぐ後ろに有紀がついていく。一線の長い壁ができた。

 

 見え見えの手であるが、妃美香を抑えるためには贅沢など言ってられなかった。圧倒的なスピードと技量。ショートコース2周でここまで力尽くさないと近づくこともできないないほどリードをひろげてきた妃美香は、恐るべきな存在なのだ。これが、ロングコースならどうか。周回が多かったならどこまで差がひろがっていたか?


 恵の頭の中に黒い渦が広がる。熱い身体に冷や水をかけられたような感じがした。


 妃美香の隣に並んだとき、その壁の厚さが恵の動きを止めた。


(なによ!この威圧感。これ以上近づけない。何者も寄せつけない孤独な壁と同時に全てのものを引き込むような風がある。高みから望んでいる姿。まるで孤高の女王・・・・・・奈美ちゃん?)


 高みから望み下を眺める妃美香。次にまっすぐに見つめたその先に奈美の姿がある。


 恵は並んで走っている瞬間、全身で妃美香の心の姿を見たような気がした。


(だめだ、いまは怯むな。とにかくここを抜く!)


 恵はさらに加速をした。有紀もその後に続く。肩を並べていた妃美香との間をひろげていく。

 目の前に見えてくる林道入口。そこへは右に曲がり入っていくことになる。ここを恵が制することができれば、有紀が続き妃美香は自然とその後ろにつくことになる。そうなれば、恵のペースでコースを支配できる。林道を抜けたそのあとは、一歩先にゴールへと流れるだけなのだ。 


 林道への入口がやけに遠くに感じる。妃美香を抑えるのに必死でペダルを踏むが、とてつもないく長い距離に感じる。


(いける!)


 恵が入口を目指して走る。妃美香がようやく顔を恵に向けた。微かに笑うと、後ろを振り向き「602」、「603」を確認する。


 「602」、「603」は頷く。


 「603」の後ろにいる芽久美は、妃美香と連携している異様さを感じ取っていた。


(有紀ネエ、恵ネエ。妃美香ネエが変だよ。何かあるよ)


 レースは終盤のコースへと突入していく。

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