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ラストスパート(14)

 恵の目に有紀と妃美香の姿が映る。


(やっと、追いつけた)


 恵は力を振り絞って走行する。急勾配を下ったときの途切れ途切れの映像が記憶に残っている。だが、自分が動いたという認識はない。どうして「602」を抜けたのか分からなかった。


(とにかく前進あるのみ)


 グイッとドリンクを飲んだ。体力は練習走行のときよりも消耗していた。


(神沢!今度こそ)


 恵は有紀と妃美香の背中を追いかけていく。 





 芽久美がアップダウンのコースを駆け抜ける。目の前には「604」が力強く走っている。


 「604」が後方にいる芽久美に気がついた。


(なんだ?こいつお子様じゃないか。いつの間にか後ろにきていた)


 「604」の視線は後方の「605」に向けられた。「605」はニッコリ笑って芽久美を指さしている。


(ただ者じゃないってことか。こんなお子様がか?けど、かまっている暇はない)


 クネクネのコースに入ると「604」は恵の後ろを追う。意識は完全に恵に集中していた。

 「604」の目の前では、恵がカーブの度に「603」に迫る光景が繰りひろげられている。


(あれほどの高速で曲がるなんて。生意気な)


「604」は再び恵に挑もうと加速する。3度目のカーブを抜けたところで、呼吸が重くなるような違和感が漂う。後方を確認する。「605」が後を追ってきている。


 違和感の原因が分からない。


(なんだ・・・・・・この感じ⁉)


 拭えない違和感に再び「604」は後方を確認する。「605」が憎めないくらいの愛らしさで笑って「604」を見ている。ようやくその違和感の正体に気がついた。


(あのお子様!)


 「604」の意識が全方位に拡散する。


(どこだ?どこにいる) 


 呼吸を沈めて芽久美の姿を探す。やっと見つけたその姿は、すぐ隣にいた。「604」の背中に冷たい汗が流れる。


(全く気がつかなかった。気配がなかった。コイツ、ただのお子様じゃないのか。生意気!)


 「604」は引き離しにかかる。カーブでのスピードは芽久美を上回っていた。芽久美は後方に導かれていった。


(なんだ・・・・・・まだ、感じが消えない。それどころか、無邪気に隙を突いてくる嫌な感じが増していく。水城のときと違う。そうだ前は暴れ馬、後ろは爪をたてた子猫か。油断できない)


 「604」は最大限に警戒態勢をとりながら走っていく。


 芽久美はすぐ後をついていった。


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