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女王の威風(5)

 東第一の選手団に混じり、恵と芽久美も走っている。A、Bクラスの走者が先頭にを走る。1周目は流す程度に走り、滑りやすいところや木の根などの障害物があればサインを出して伝えていた。

 東第一の部員は殆どが経験者である。それもあり、集団でも他の走者を邪魔することなくスムーズに走っていく。


 2周目に入ると、各自の力量にあわせてペースを変える。有紀は先頭グループにスライドしていく。恵も芽久美も少し遅れながら後ろについて走る。部員同士がコースの変更点を確認しながら走行してくれるおかげで、よく理解できた。コースの変更は大きくは次の3点だ。

①左右のカーブがあるクネクネのコースにジャンプ台が設けられた。

②急勾配のコース幅が2人で走行できるくらいに広がっている。

③ラストの坂を上りきってからゴールまでの平坦のコース距離が延びている。


 特に急勾配では、一人で走るにはコースの選択幅が広がり、下りの恐怖心を和らげてくれる。一方、2人で下ることもできるので、白熱して争う光景になることが想像できる。


 3周目になると、恵、有紀、芽久美が自分の得意なところで先頭になるというルールで走っていた。恵はもちろん急勾配で二人を驚かせるほどのスピードで突っ込む。有紀は、カーブや上りで力を発揮し、芽久美は切れの良いジャンプをみせる。


(すごいな、新川さんもメグちゃんも。レースは簡単にはいかないな)


 有紀の後を追う恵の頭には、たった2周のレースなのに何かが起こりそうな期待とも予感とも言えない不思議な感覚が渦巻いていた。



 

 先頭を走る美樹雄に小学生選手が懸命についてきている。瞬が最後尾でカバーする。

 ジャンプ台では綺麗なフォームで見本を示し、急勾配では走りやすい箇所を教えながら走行する。今までリーダーのような役目とは縁がなかった美樹雄にとっては、刺激的というか新鮮な空気が頭の霧を晴らしていった。



 緩い上り坂を走っているとき、後ろから迫る気迫に瞬が気づく。


「美樹雄、追い抜き。左へ」


 瞬が後方から情報をあげる。美樹雄も確認して、左によるサインをだ

すと小学生選手も美樹雄のあとに続き左による。


 後方から赤い集団が一気に抜き去っていく。追い抜く瞬間、先頭の妃美香が美樹雄の方に顔を向ける。ゴーグル越しにその瞳は読みとれなくとも、微かに上がった口角がその心情を伝えていた。後ろ手にVサインを出す。SSSでは『ありがとう』のサインだ。後続の選手も妃美香に続き一糸乱れずにVサインを出して通り過ぎる。見事というほかない統制と連携。年上の選手を従え引き連れながらも、気後れすることのない堂々とした勇姿。それはまさに、女王と呼ぶに相応しい威風を備えた妃美香の姿であった。


(ロードから転向した)


 美樹雄の頭に有紀の言葉が蘇る。この時ばかりは、その言葉が納得できるほどの魅力を備えた妃美香を認めるしかなかった。

 


「わぁーっ」

「かっこいい」


 小学生選手が感動して声を上げる。


「あいつ、笑っていたな。あんな顔もするんだ」


 瞬が前の美樹雄に声をかける。


「そうだね。僕も初めて見たかも」


 美樹雄は後方を確認して、コースの中央に出ると、緩い坂を上っていった。


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