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思い今は気づかず(2)

 恵と奈美は湯に浸かって、あーだ、こーだと話し込み楽しんでいた。


「恵ちゃんは、いつからマウンテンバイク乗ってるの?」


 奈美はうっすらと汗を浮かべた顔で聞いてきた。


「あー、そうだなあ。中学になってからだよ。いま乗ってるのは、お爺ちゃんがゲートボールの景品でもらったの。それを譲ってもらったんだ。ほら、私、山の中で育ったから、移動手段なんて歩きか自転車。しかも、まわりに遊ぶ友達が少ないから、一人でよく山の中を走ったよ。走り方なんて全部自己流なんだ。だからすごいと思うの。新川さんやメグちゃん。美樹雄も瞬も。あんなに綺麗に速く走るなんて」


「恵ちゃんもすごいよ。今日の新川さんとの対戦も先生が感心してた。相沢さんと三井さんも見入ってた。私もだよ」


 奈美が興奮して言うのを恵は、ニヘラとふやけた顔で聞いていた。


「そういえば、奈美ちゃん、どうして自転車部に入ったの?私みたいに成績をエサにされた、なあんてことはないだろうし」


 恵はウーッと背伸びしながら聞いた。


「う・・・・・・うん。先生には恵ちゃんと一緒に誘われてて。本当は迷ってて。でも、恵ちゃん見てたら走りたくなって」

「私?」

「うん。練習走行で、()()()()()と新川さんと走ったのを見て、私も走りたくなった。恵ちゃんが二人に食らいついているのを見てたら、心が震えた。『私も走りたい』って。なんだろう?変だよね」

「全然、変じゃないよ。でも、私、あのときボロボロにやられたんだけどなあ」


 恵は恥ずかしがって、顔半分を沈めて上目で奈美を見上げた。


 しばらく二人は並んで仲良く湯に浸かっていた。


「恵ちゃん。もう、げんかーい。先に出ていい?」


 奈美は赤く火照った顔で恵を見た。張りがあり、スベスベした柔らかい肌から汗が滲んでいる。普段は大人しく優等生タイプで可愛い奈美が、赤みを帯びた顔でいつもと違い子供っぽく、それが余計に可愛く見えた。


「あー、ごめんごめん。長風呂に付き合わせちゃったね。いいよ。私はもう少し、リラックスしてまあす」


 恵は手を振りながら、湯から上がる奈美を見送った。

 

 

 一人残った浴室はガランと広く感じた。火照った身体の上半身を湯から抜け出し、夜風にさらした。身体から湯気が立っている。  


 しばらくボーッと空を眺めていた。星がよく見えた。


(何だろうこの気持ち・・・・・・)


 不意に襲ってきた何とも言えない、重い気持ちが身体を支配した。山の夜風で頭と身体が冷えてきた。再び湯に身体を沈めた。


(この気持ち・・・・・・あれだ。いま、分かった)


 恵は湯に顔を漬けてその気持ちと対峙した。


(くやしい・・・・・・。そうか。私、悔しいんだ)


 恵は湯から顔を上げると、霞んで見える星を眺めた。


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