女子×激戦×戦慄(8)
有紀の前には恵の姿があった。
(私、負ける?この子に負けるの?もう、追いつけない……)
有紀の目に黄色のウェアが映る。虚ろな目にASAMIの文字がかすれていく……
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前を走る一台のライトグリーンのマウンテンバイク。女の子が乗っている。
「待って。お姉ちゃん、待ってよ」
有紀はその背中をいつも眺めていた。紺色のウェアの背中に浮かぶSSSの文字。追いかけても追いかけても追いつけない背中。
「こんなところで負けたらダメだなあ」
女の子が笑って、どんどん前に進んでいく。
「お姉ちゃん、追いつくから。絶対お姉ちゃんに追いつくから」
「まだ、まだ」
「速くなる。私、速く走るから。だからお姉ちゃんと走りたい」
有紀が必死で叫び、追いつこうとペダルをふみこむ。
「お姉ちゃん。私、お姉ちゃんと走りたい!」
有紀の声に女の子が振り向く。
「うん。一緒に走ろうよ。有紀」
有紀はうなずくとその背中を目指して懸命にペダルをこいだ。
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有紀の目には再び黄色のウェアが映った。
(負けない。私は、負けない。もう一度お姉ちゃんと走るまでは絶対、負けるもんか!)
「あの子には負けない!」
有紀はそう叫ぶと目を見開いた。虚ろな目が鋭い光を放つと獲物を狩る豹の目へと変わった。有紀の足に力が入る。
2回目のS字に入る。有紀はスピードを上げながらスムーズに抜けていく。さすがといえる立て直しの早さであった。恵との距離がさらに縮まる。恵も必死で逃げていく。二人の前に再び山が姿を現した。
ーーーーーーあーっ、新川選手、見事な巻き返し、差はわずかになった。これはまだ分からない。さあ、巻き返すかあーーーーーー
二人は恵を先頭に山を上っていった。
「捕まえたぁーっ!」
有紀が叫んだ。
山を上りきるところで二人はジャンプした。
ーーーーーーあーっと、今度は水城選手も飛んだあ。だが、二人の飛び方が違うぞー。水城選手、高い!高く飛んだー!ーーーーーー
会場が再びわき上がった。




