女子×激戦×戦慄(7)
1回目のレースを終えるころ、会場の人々もこの異様さに気づきはじめた。どの選手も有紀のタイムはおろか恵のタイムにさえ届いていないのだ。
2回目のレースが始まる。恵と有紀がコースを入れ替わり準備に入る。恵を見る有紀の目は笑っていない。
(1回目のレース。全く勝った気がしない。次に水城さん、どんな走りをする?負ける気はしないけど、何だろう。私、追いつめられている?こんな気持ち久しくなかった。負けたくない相手が目の前にいる。そう思う私がいる)
有紀が気迫のこもった眼差しを恵に向けた。恵もその視線に気がつき有紀を見るとニッコリと笑った。その笑顔は愛想笑いなどではなく、明らかに答えを持った笑みだった。恵の目が有紀の心に動揺を与えた。
(落ち着け!ミスをしなければ絶対に勝てる。水城さんはまだ初心者。油断しなければミスはない。勝てる)
有紀の背中に冷たいものが走った。それを沈めるように深く静かに呼吸をする。
ーーーーーーさあ、二回目のレースだ。泣いても笑っても、これで決着がつく。二回戦に進むのは新川選手か水城選手か。1回目以上のレースが展開されるのかあーーーーーー
二人がスタート台につく。お互いを見ることもなく、スタンディング体勢をとる。
(3・2・1、3・2・1……)
恵はヘルメットの中でつぶやいていた。
スタートのシグナルが鳴り始める。
「3・2・1 、 3・2・1」
テンポを早くしながらつぶやいていく。
「3・2・1」
恵のカウントと同時にシグナルが青に変わり、金具が倒れた。恵はドンピシャのタイミングで一気に駆け下りていく。有紀もスタートする。有紀が出遅れたことでわずかに恵がリードした。
ーーーーー水城選手、いいスタートだ!わずかながらリードをとる。新川選手も見事にポールを抜けS字を駆け抜ける。水城選手に並ぶか。あーっ!ーーーーーー
会場がどよめいた。有紀がS字の出口をオーバースピードで抜けきれず、瞬間バランスを崩した。恵がリードを広げた。
「よし!」
美樹雄が拳を握りしめ叫んだ。奈美も同じように二人の走りを見ていた。
-ーーーーーあーっ、新川バランスを崩した。水城リードを広げた。だが、新川またスピードを上げる。差をつめられるかあ。どうなるー!ーーーーーー
有紀の足が重くなる。新星のごとく現れた恵。初めて会ったときからこうなる予感がしていた。練習走行でも屈することなくガムシャラに挑んできた恵に有紀はどこか恐ろしさを感じていた。積み上げてきた自信が一気に崩れさる音が聞こえそうだった。
目の前に初めて厚い壁が見えた。
(いや初めてじゃない。二度目……)
有紀は恵の背中を追った。




