女子×激戦×戦慄(4)
ーーーービッグマウンテンだあ。ここまで、二人並んでいる。水城は頂上を走って越える。新川はーっ、飛んだあーっ!ーーーーーー
実況が叫ぶ中、会場もどよめいた。
並んだ二人は、山の頂上で走法が大きく違った。有紀が登りきったところでジャンプして頂上を越えて下り途中に着地するのに対して、恵は登りきるとペダルを全力でこぎ、フル加速で下った。
「あいつ、やりやがった」
瞬が声を上げた。
やりやがったのは当然、恵だ。
「まずい!」
美樹雄も思わず声を上げた。奈美は美樹雄の反応に恵のなにが悪いのか分からずにいた。
ーーーーーあーっ、水城、フラグに接触。これで差がついたーっ!ーーーーーー
実況の声が力強く響く。
山をおりると50センチ幅のフラグスラロームが待っている。最初のポールスラロームよりも、幅が広いため、左右に大きく回ることになる。これをいかに車体のブレを少なくしてくぐり抜けるかが鍵である。
悪手。恵の走行はそれだった。フル加速でおりたのはいいが、フラグスラロームへの突入速度が速すぎた。結果、避けきれずにわずかに接触して失速した。
一方、有紀はジャンプからの着地が下りの途中のため、加速は恵より緩やかであった。それゆえスムーズに突入でき、見事なフラグスラロームの走行を見せた。
恵も素早く体制を立て直して後に続くが、有紀が先にゴールした。
ゴールそばの電光掲示に走行タイムと0.8の表示がでる。有紀が恵よりも0.8秒先にゴールしたことを示した。
「あーっ!恵ちゃん。恵ちゃん、頑張ったよね。善戦したよね」
「奈美ちゃん……」
奈美は悔しがり、確認するように美樹雄に訪ねた。
美樹雄はタイムと有紀を見ていた。その顔は固まっていてふるえているようにも見えた。
奈美は美樹雄がなぜそれほど動揺しているのか分からず、瞬と浩一の方を見た。二人とも美樹雄と同じように有紀を見ている。
奈美は何かすごいことが起きているのだと理解しながらも、頭の中はまだ霧の中だった。不安顔な奈美を気にかけて美樹雄が声をかけた。
「奈美ちゃん、あれは、善戦なんかじゃないよ」
「えっ?」
奈美は美樹雄の言葉に自分の耳を疑った。
「あれは……あれは、激戦だ」
美樹雄は押し寄せる激震に耐えるような目で奈美を見た。
ーーーーーー新川選手、最後は余裕の走りでゴール。ファーストタイムも今後の出場選手の目標になるか。水城選手も健闘しました。2レース目に期待だあーーーーーー
実況アナウンスがレースを締めくくった。
まだこの時点で二人のレース結果の意味を理解した者は、会場に僅かしかいなかった。朝見校の浩一、美樹雄、瞬、コースの考案者、それと有紀である……




