女子×激戦×戦慄(3)
恵はスタート台の左にいる。スタート台の前方には鉄製の金具が立ち上がりマウンテンバイクの前輪を抑えている。隣の有紀が、手を差し出すと恵はそれに応えて拳をあわせた。有紀がスタンディング姿勢をとると恵もそれに続いた。
恵の心臓は高鳴っていた。周りの声援も聞こえていない。
(どっちだ?どちらがいい?)
恵は自問自答をしていた。答えがでないままスタート準備の声が聞こえる。電子音が鳴り目の前のシグナルが青になる。それと同時に金具が倒れた。一気に走り出す。
実況が叫ぶ。
ーーーーーさあ、スタートした。どちらも素早いスタートだ。ポールをくぐり抜ける。新川、さすがに速い。水城も負けてない。S字も全身がバネのように新川は駆け抜けるーっ!これは速い。水城、差はない。ジャンプはどうだ。おっと、二人ここまでは差がない。次のS字、ここも差がないのはどういうことかあーっーーーーーー
会場が盛り上がる。実際に有紀と恵に差がないまま2回目のS字に差しかかった。右のカーブから左へ移るときに、全身を伸び縮みさせ、体重移動をさせていく。有紀が滑るように右から左のカーブに移るのに対して、恵は飛び跳ねるようにして移っていく。この走り方は瞬と似ていた。
(ここまでは思ったとおりだ。ついて行けてる。新川さん、本気かな?)
恵は自分の走りがいまだどの程度なのか分からなかった。ただ、全力で走っているという実感だけが体を支配していた。
S字を抜けると目の前には今大会から設置された大きな山がある。頂上はマウンテンバイク1台分くらいの距離をおいて下っていく。台形の形になっている。目の前にそれを見たときは、まさに壁と思えるほどほど大きくて急だった。二人の前にはその山が迫っていた。
(ここだ!)
恵はペダルを踏み込んだ。




