女子×激戦×戦慄(2)
スタート地点にはすでに有紀の姿があった。総勢32名の選手が参加している。それゆえ、レース進行はかなりタイトである。男子だと倍以上になるのでさらに厳しくなる。
有紀と目があう。お互い軽く頭を下げる。有紀の目はいつもの柔らかい雰囲気で恵を見ている。お互い近づいて挨拶をした。
「今日は全力でいきます」
恵はヘルメット越しに声を上げた。有紀はうなずいた。
「私、最初に一緒に走れてうれしいの」
有紀が声を返した。
大会を盛り上げる実況が響きわたる。
ーーーーーーさあ、MTB大会、前回よりも多くの出場選手を迎え幕を切りました。まずは、デュアルスラローム女子の1回戦。選手は、ご存じ”新川有紀選手”前大会のチャンピオンだあ。今回は東第一校MTB部からの出場。今年から高校生になったんだね。おめでとう。では新川選手のコメント【初心にかえり頑張ります】とのこと。さすが前回チャンピオン。余裕を感じる言葉。対戦相手は、これも同じ高校生!チーム朝見校、水城恵選手。朝見校は今年、自転車部を新設。今大会が初参戦だあ。水城選手のコメントは【全力で走り抜けます】これも初々しくて応援したくなるコメントだ。全力で駆け抜けてほしいーーーーーー
アナウンスの言葉に会場からはかすかに拍手がなる。おそらく、チャンピオンに全力で挑もうとする恵を応援する同情的なものだろう。
奈美はスタート台にいる恵を祈るように見ていた。浩一、美樹雄、瞬がその横で眺めている。
「なあ、恵って初めての走行から、最近になって走り方が変わってねえか?」
瞬が美樹雄の隣で言った。
「そうですね。初めは一緒に走る人と同じような走り方でしたけど、最近はスタイルがいろいろ変わってきます」
「それだよ。あいつ、自分の走りに俺たちの走りを混ぜたような。なんか、こう上手くいえないんだけど……」
「自分で考えて走っているんじゃないかな」
「そう、そんな感じ。あいつ、本当に新川に勝つつもりじゃないのかと」
「僕もそう思います。でも、そこまでの自信が本当にあるのだとすれば、どこで勝負にでるのか」
美樹雄はコースを眺めていた。
ーーーーーーさあ、いよいよスタートだ!ーーーーーー
会場に実況の声が響いた。




