初陣、いざ参ろう!(4)
大会本番ではスタート位置までリフトが稼働している。練習の時は、マウンテンバイクを押して上がったのだが、その手間がないのはものすごく有り難いことだと恵は感動していた。
リフトには係員がマウンテンバイクを乗せてくれる。手順は、まず自分がリフトに乗り発進、次のリフトはスタンドが付いた状態になっている。これに係員がマウンテンバイクを乗せるのだ。降り場で先に降りて、次にくる自分のマウンテンバイクを降ろして完了。見ていると緊張して上手くできるか不安になるが、やってみると案外簡単である。
三人はコースを見下ろしていた。合図とともに次々と選手が降りていく。スピーディーにいく選手もいれば、慣れないコースにもたつく選手もいる。
コースは前の大会より距離が伸びていた。瞬の予想どおり、大きな山が追加されており、さらにフラグのスラロームがある。
恵は大会のために新調した黒色のフルフェイスのヘルメットをかぶっていた。辺りの騒音が遮断された感じで、目の前のコースに集中する不思議な感覚を覚えた。
(相手がいるのに、目の前のコースに一人で挑む感覚。自分だけの世界)
美樹雄は恵の後ろにいる。恵が緊張しているのに気が付くと肩をたたいて、スタート位置を指さして説明をした。
練習で何度走っていてもやはり大会の雰囲気は緊張を誘うものであることは、美樹雄も知っている。
「合図は信号を見ていればいい。音はあてにしないで。あと最後の方の山は、勢いをつけないと失速するから」
美樹雄は優しく笑っている。恵もスタート風景を何度も確認しながら、次第にリラックスした表情になっていった。
先に美樹雄と瞬がスタートをすることにした。美樹雄がオーバーアクションで後ろにいる恵に、手順を教える。
二人が一斉にスタートをした。ポールも豪快にすり抜け、全身がバネのように上下に伸び縮みして走っていく。
「お~~!」
二人の走りを見ている人からは注目の声が聞こえていた。
係員の合図で恵もスタート位置に着いた。隣は男性の選手だった。ちらりと恵を見ると手を挙げて挨拶をした。恵もそれに応えた。
信号がブルーになり、前輪を押さえていたバーが倒れた。練習のときよりもスタート位置からコースまでが長いように感じたが、コースにでればその違和感も吹き飛んだ。ポールからS字を駆け抜ける。はじめてみる大きな山はまるでそびえ立つ壁に見えた。美樹雄の言うとおり勢いがないと、上っている途中で止まってしまうのではないかと思った。下りは思わずブレーキをかけそうになるくらい急だった。最後にポール代わりのフラグが並ぶ。幅があるだけ、スラロームのスピードが削られる。これはかなりやっかいだと恵は思った。
ゴールすると美樹雄と瞬が手を挙げて待っていた。恵はそこにハイタッチをして、全身で抑えられない高揚感を表した。
この後も三人はコースの感触とスタートの練習をするため、何度か走行をした。
会場アナウンスが開会式の案内を告げていた。
いよいよ大会が始まる。




