初陣、いざ参ろう!(3)
「えーっ!」
奈美が普段は見せることない驚きの表情をすると、ピョコンとイスから立ち上がって恵から組み合わせ表を見せてもらっていた。
デュアルスラローム。2人の選手が同じレイアウトの平行した2つのコースで競うレース。コースの距離は短く、その中でS字のバンクターン、ジャンプ、スラロームポールなど様々な障害が設けられている。トーナメント方式で行われ、選手は1度の対戦で2回競う。2回目のレースは1回目とコースを入れ替わり行う。2回の合計タイムの優れている選手が勝ち抜けていく。短距離であるため、スピーディーでスリリングなところが魅力の競技である。
「第1戦がいきなりチャンピオンとの対戦です」
美樹雄が浩一に報告した。
「いいじゃないですか。遅かれ早かれ当たる相手です。ある意味、朝見校を見せつけるチャンスじゃないですか」
浩一は冷静にいつもの笑顔で答えた。
「あっ、私もそう思います。新川さんとは、初練習の時に一度だけ一緒に走ったけど、凄く楽しかった。また、同じ思いができるのかと思うとワクワクします。チャンピオンといきなり走れるなんて、私、ついてるなって」
恵は美樹雄や瞬の気遣いを意に介することなく、少々興奮気味に言った。
「そうですね。その意気でこそ部長です。それに、そう思わないと勝てる勝負も勝てなくなってしまいます」
「先生、勝つつもりでいたのですか?」
瞬が冗談でしょと言わんばかりの顔で聞いた。
「そうですよ。当たり前です。負けるつもりで対戦するなんてあり得ないでしょう。短期間ですが、トレーニングはしっかりしました。あとは、全力でいくだけです。朝見校が初戦で金星上げれば、弾みもつくでしょう」
(この先生、マジなのか⁉)
さすがの瞬も強気な浩一の言葉に、底が見えなくなっていた。
「開会式までは練習走行ができます。さあ、肩慣らし?いや、足慣らしといきましょう」
浩一が景気よく声をかける。
「それじゃあ、例のやついきましょか」
恵が声をかけると、奈美、恵、瞬、美樹雄の順番で円陣を組んだ。
「朝見校、ファイト!めざせ、ナンバーワン!さらなる高みへ、ゴー!」
四人はそう叫ぶと手を挙げて、全員でハイタッチをした。
これは、恵がやりたいと言い出したことで、練習前に必ずやるようにしていた。はじめは、みんな照れてうまくいかなかったが、次第に調子が合い、いまでは習慣化していい雰囲気を生み出した。意外にも美樹雄が乗り気で笑顔でやっている。
三人はコースへと走り出した。




