ときめきスラローム(6)
「おーし。次は俺と勝負だ」
瞬が恵を挑発した。
「望むところ。お主の技は見切ったわ」
「お前の技は俺には効かぬ」
二人は子供の言い合いをしながらスタート台についた。
「右の方が走りやすいぞ」
瞬が入れ替わろうとしたが、左側も走りたいと恵は左のスタート位置に着いた。
「奈美ちゃん、かけ声お願い」
恵が奈美にお願いした。
「はい。いきまあす。3・2」
奈美の声に瞬がペダルに足を掛けたまま立ち上がるスタンディングの姿勢をした。恵も瞬のまねをして同じポーズをした。
「えっ!・・・・・・1」
奈美は一瞬驚いた。
瞬が勢いよくスタートする。恵もわずかに遅れてスタートした。切れのあるリズムで瞬がポールをすり抜ける。恵も後に続く。瞬は全力ではないが、かといってあからさまに手を抜いてはいなかった。
エッジをきかせながら瞬がS字を抜ける。この時点で恵とは1台分の差をつけていた。
素早く小さくジャンプをすると、S字を豪快に駆け抜けてゴールした。恵とは5秒以上は差をつけていた。
「善戦した方じゃないか」
ゴールした恵を待って瞬が言った。
「ほー。さすが、美樹雄と決勝を争っただけのことある。部長としては、頼もしい限りだ」
恵は笑って瞬を見た。
「おまえ、バカにしてるだろ」
瞬は舌を出して応えた。
「あー、二人とも速い。恵ちゃん、2回目なのにもう慣れた感じ」
奈美は興奮して言った。
「ほんとう。凄いよ。瞬もあからさまに手を抜いてないのに。ついて行けてる。エントリーしたら案外、上位にいけるかも」
美樹雄は奈美と驚きを分かち合っていた。
「三井瞬に相沢美樹雄、それに水城さんか。朝見校、侮れないね。本当にいまの2回目の走行?」
不意に後ろから掛けられた声に美樹雄と奈美が振り返った。二人の目の前には新川有紀が立っていた。
ヘルメットからのぞかせるショートヘア。大人しそうな目なのに、活動的な雰囲気がアンバランスだった。
(この人が新川有紀さん。走っているときは分からなかったけど、ほんとスタイルいいなあ)
奈美は恵の言葉を思い出しながら、有紀を見ていた。
「美樹雄、久し振り。クラブの送別会以来だね」
有紀は自然な笑みを浮かべて言った。
「送別会は3月。今は4月です。もうすぐ5月になりますけど。久し振りじゃないでしょう」
美樹雄が言葉を返す。学校での雰囲気とは違う美樹雄に奈美は戸惑った。
(たぶん、これが長年のつき合いっていうものなのかな)
奈美は不思議そうな顔で有紀を見ていた。有紀がその視線に気づいた。
「東第一校の新川有紀です」
「初めまして。朝見校の北川奈美です」
奈美はゆっくりとお辞儀をした。有紀は丁寧な物腰の奈美に目を丸くして固まった。
「北川さん、すごく礼儀正しい。なんだか緊張します。もしかして・・・・・・」
有紀は気まずそうな顔をした。
「何考えているんですか?」
美樹雄がすかさず突っ込んだ。
「いや、ちょっとタイミング悪かったかなと」
「何が?」
「声かけるタイミングです。お二人の邪魔をしたのかと」
「タイミングも何も同じ部員です。僕を相手にするほど北川さんは、暇じゃないんです」
美樹雄は奈美を気遣うように有紀に答えた。奈美は有紀の言葉に顔を赤くして下を向いてしまった。
「有紀ネエ!」
芽久美が元気よく駆け上がってきた。その後ろには恵と瞬がついてきていた。
「へーっ。役者がそろったなあ」
瞬の声が周りに響いた。




