ときめきスラローム(5)
「怖くないですか?」
美樹雄が恵の方に向いて聞いた。
スタート台には恵が右側で美樹雄が左に並んでいた。スタート台は一段高い位置にあり1mほどの急傾斜を降りてコースに出る。すでにこの時点で初心者なら怖くなって当たり前だった。
恵はコースの方を見ていた。
(すごい!なんだろ。このワクワク感。こんな遊び小さいときにしたような。小高く盛ったジャンプ台で・・・・・・)
美樹雄の方をみて恵は思わず目を大きくして笑った。まるで子供のように無邪気なその笑顔に、美樹雄は見とれてしまった。
「ねえ、どうしたらいいの?」
恵の声に美樹雄は我に返った。
「3・2・1でスタートしよう。最初だからあまりスピード上げないで並んで走るよ。スピードが落ちたらペダルこぐくらいで」
美樹雄の声に恵はうなずいた。
「じゃあ。3・2・イーチ」
美樹雄の声に恵も合わせた。
二人はいっせいにスタートした。木製の傾斜を降りるとポールを右に左にターンする。恵はリズムよくすり抜けていく。美樹雄は恵のペースにピッタリ合わせた。
次はS字にさしかかる。1m程の土手となった部分を駆け抜ける。斜面を下るGに加え、遠心力の横Gが身体にかかる。恵はその体感にゾクゾクしていた。左右のカーブを楽しむ。S字を抜けた瞬間、目の前にジャンプ台が飛び込んだ。気持ちの準備ができていなかった恵は、飛び込むタイミングに戸惑った。すかさず美樹雄がスピードを上げて、先にジャンプ台に乗った。恵はそのタイミングをまねてジャンプ台に入る。飛び上がると一段上の景色が見える。着地すると次のジャンプ。たいした時間ではないが、宙に舞っているのがずいぶん長く感じる。夢の中にいるようだった。着地の瞬間に現実に戻る。次のS字は急だった。ペダルをこぎ一気にすり抜けていく。横にかかるGが頭にまでのしかかる。出口が見えた。抜けたところでコースが終わった。
「いい感じ。まるでアイスフィギュアのペアみたい」
上から眺めながら奈美がつぶやいた。
瞬はそれを聞きながら二人を見ていた。
「確かに。よく美樹雄も合わせたな。感心するよ」
同時にゴールした二人。美樹雄は恵の顔を見た。恵はキョトントして美樹雄を見た。まるで高いところから平然と飛び降りて、何事もなくすました猫のような顔だった。
「すごーい。おもしろい」
恵は目を輝かせて喜んだ。
「美樹雄ありがとう。ジャンプ台のことすっかり忘れてた」
恵は感心しながら言った。
(教えるつもりでそうしたけど。すぐに意図を理解するなんて)
美樹雄は恵の言葉に逆に驚かされていた。




