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スチャラカ娘とちゃっかり転任先生(3)

 四限目を終えて昼休み、恵はイスに腰掛けスカートのポケットに手をつっこんだままぼんやりと天井を眺めていた。別に他に見るところなどなかった。棚には進路指導の資料と参考書がギッシリと詰まっており、見ているだけで頭が痛くなりそうであった。


(まいったな~。私、なにかしたかな)


 あれこれと自分の記憶をたどっているうちに二、三思い当たることが頭をよぎっていった。恵がそうこう考えているうちに、ガラッと戸を開ける音とともに滝宮浩一が入ってきた。何を考えているのか恵を見つけるなりニコリと笑いながら近づいてきた。


「ずいぶん早かったのですね」

「いえ・・・・・・」


 恵はポケットから手を抜いて立ち上がったが、慌てていたため、つまずきそうになった。その滑稽とも思える光景に浩一は微笑んだ。


「そんなにかしこまらなくてもいいんだよ。まあ、とにかく座ろうか」

「はあ」


 恵は促されるままイスに腰掛けた。相変わらずぎこちなさが抜けずに、かたい表情をしていた。そもそも恵にとって浩一は会った瞬間から苦手な部類に入っていた。厳格とまでは言わないが、それなりに厳しい父親のもとで育ち、さらにその父親の影響で男勝りの性格を持ち合わせた恵にとって、頭が良く、顔立ちの優しい浩一はどことなく付合いにくいものがあった。さらに恵にとって最悪の賜物”英語”の教師という立場が浩一を別世界の人という感じを与えた。


「それにしても今朝の捕り物は凄かったね。お見事の一言だよ」

「へっ、見てたのですか?」


 恵は顔を赤らめたが、浩一の予想外の切出しに少し安心した。


「ああ、しっかりとね。それにしても本当にいいセンスだ。それにあのMTBもいいのを乗ってる。あれはキミが買ったのかい」

「いいえ、うちのお爺ちゃんからもらったんです」

「へー、お爺ちゃんが。またなぜ?」

「ゲートボール大会で優勝したときの優秀選手賞の賞品ですけど、自転車よりもバイクの方がいいって譲ってくれたんです」  

「へー、そいつはすごいね」

「すごいでしょ」


 恵の笑顔のこたえに浩一はゆっくりとうなずくと、再び笑顔で話した。


「あっ、そういえば恵君はこの四月に転入してきたんだね」

「はい」浩一の脈絡のない話に、恵は訳が分からず答えた。


「ほんと警察官がふつう四月間近になって山の駐在所から本署に転勤なんてありですか?私まで何がなんだか分からないまま転校しちゃいまして」

「ふむ。そいつは大変だね。だけど、僕も同じなんだよ。知ってると思うけど、この四月で僕も転任したわけで」


「はあ」恵は眉を少しよせた。

「と、いうことは私たちは同じ境遇なんですね」

「うん、そう同じ境遇なんだよ」


 浩一はいっそうの笑みを浮かべた。


「そうなんですね・・・・・ハハハ」

「そうなんだよ。ハハハ。それでね」


 周りから見たらとてつもない雰囲気を漂わせている会話であった。


「はい?」


 恵は笑顔をくずさずに返事した。もう、これ以上は気まずくはなりたくはなかったのだ。しかし、浩一も負けずに笑顔のまま話した。


「実はね、この学校の教師は何かの部の顧問にならなきゃいけない規則で、それで、校長は、いまある部で顧問できるものがなければ、新しい部をつくってもいいと言うんだ」

「はい」


 浩一は恵の返事に満足して話を続けた。


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