ときめきスラローム(2)
二人の驚きの声に恵は相変わらずボーっと、理解不能状態であった。
「すごいでしょ」
奈美が二人の反応に調子を合わせて感心している。
「ほんと、すごいよ。ここを初走行でこのタイム出すなんて。もし、前回出ていたら神沢を抑えていたかも」
美樹雄がメモを手にして奈美を見た。奈美は美樹雄の目にほほを桃色にしてうなずいた。
「すごくなんかない。手も足も出なかった。追いつけたと思ったらひらりとかわされて、差をつけられる。遊ばれている感じ。子供が必死で大人に挑む感じ」
恵は立ち上がろうとしたが、足に力が入らずによろめいた。
美樹雄が恵を支えた。
「大丈夫、大丈夫!ありがとう」
恵は美樹雄の手を借りずに歩こうとした。
「無理だ」
美樹雄が強い口調で言った。いつもの控えめな雰囲気から一転して、厳しい感じになっていた。恵も思わず動きを止めた。
「ここに座って」
美樹雄は長椅子に恵を座らせると、バッグからスポーツマッサージ用のクリームを取り出した。
「そこに背中向けて寝てみて。足を触るけどいいかな」
「はい」
恵は促されるまま、うつ伏せに寝た。美樹雄が恵のふくらはぎを軽く押しながらなでた。
「いっ!ひゃっ!!くすぐったい」
恵がビックリして美樹雄の方に顔を向けた。奈美もビックリしていた。
「やっぱり。こんなにガチガチになって。硬直している。歩くこともできないほどに」
美樹雄は手にクリームをつけると、なれた手つきで擦り込むように恵の足をマッサージした。
はじめは緊張していた恵の顔つきも次第にうっとりと気持ちよさそうな顔になった。
「見事なもんだな。僕がやるとハラスメントだな」
浩一が感心しながら美樹雄のなれた手つきを眺めていた。
「クラブでしっかり教えられましたから。まあ、自分用にですが。SSSのメンバーならみんなできますよ」
美樹雄がマッサージしているとガチガチだったふくらはぎが、プルンと柔らかくなっているのが分かった。
「相沢さん、そのマッサージ私にも教えてくれませんか?」
奈美が興味深く眺めながら言った。
「もちろん。いいですよ」
恵の足の状態に安心しすると、笑顔で答えた。
「あっ、足が軽い。まるで魔法みたい」
恵はゆっくりと立ち上がると、足踏みしながら状態を確認していた。
「さっきの走行で筋肉はかなり消耗しているから。無理には動かない方がいいよ」
美樹雄は恵を気遣って支えた。
「ありがとう。今度は大丈夫」
恵はイスに座って足をブラブラさせた。
「でも、新川さんもほんとに凄い。神沢に遅れずについて行く。芽久美ちゃんにしてもよくあれだけ走れるなと。本番はもっと激しくなるんだろうな」
「そりゃあ、それなりにな。でも今日、お前は初走行であっちは走り慣れての練習だ。状態も走り方も違ってあたりまえさ。いきなり勝負で勝とうなんて都合よすぎるんだよ。神沢はチャンピオンだけのことはある。そう易々と勝てる相手じゃないぜ。でもな、あの新川ってんのは、得意種目はクロカンじゃない」
「えっ?・・・・・・・どいうこと?」
恵は瞬を見て驚いていた。




