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戦場!クロスカントリー練習走行(5)

 恵はペースを崩さずにコースを走った。

 

 ソレーーーーーーーーっ!

 

 テープで区切られたくねったコースを抜けると、軽い雄叫びを上げながら急勾配をくだった。ブレーキのタイミングもつかみ、スルリと曲がっていく。コースではお気に入りの箇所になっていた。緩い坂を上り始めると体も熱くなった。心地よい負荷が足に伝わり、息が弾んだそのとき、背筋に冷たく鋭い衝撃が襲った。


「ミギーッ!」


 短く叫ぶ声が耳に届いたかと思うと、右側から鋭く突き抜けていくものがあった。恵は何が起こったのか分からなかった。ただ、熱かった体が一気に冷めるのを感じた。鋭く厚い冷気が自分の体を突き抜けていったのだ。寒気がし、鳥肌がたっていた。


(なんなの?この感覚)


 瞬間、目があった。突き刺す視線に恵は凍りついた。


 次に気づいたときには目の前に赤いウェアの後ろ姿があった。SEINTOREAの文字が目に焼き付いた。神沢妃美香だ。足が震えていた。ペダルを踏んでいるが力が入っていない感じ。追いつこうにも、妃美香との差はひろがるばかりだった。


「右行きます!」


 聞き覚えのある声が届くと、素早く恵を追い抜いていった。新川有紀だ。有紀はそのまま妃美香を追って走っていった。


「まってよ~。妃美香ネエ、有紀ネエも~。あっ、右行きます」


 そう言いながら、芽久美が追い抜いていった。


 全てが『()()』と言う間の出来事だった。

 恵の頭の中は爆風で吹き飛ばされたような衝撃をうけ混乱した。


「走れば分かる」恵の頭の中に瞬の言葉がよみがえった。


(この突き抜けた衝撃!なんだろう・・・・・・・)

 

 恵は一人置いて行かれたような虚無の空間のなか、遠のく三人の後ろ姿を眺めていた。


 ドクン ドクン ドクン


 凍りついた身体に鼓動の響きがこだましていた。


 ドクン ドクン ドクン ・・・・・・



 頭、手そして足は電撃を受けたようにしびれていた。騒音はすべてシャットアウトされた。


(そう、いま私は刺されたのだ。私は一撃で葬られた?あの目・・・・・・戦場なら撃墜されたこと?私、なんの反撃もできないままで?・・・・・・なんだかそんなの・・・・そんなのって、い・や・だぁー)


 頭の中で状況が整理され、冷静になった。凍り付いた背中はゆっくりと呼吸のリズムを取り戻していった。なぜか分からないけど、悔しさがこみ上げてきた。このまま平然とは走れそうにない。恵の足に力がこもった。前の三人を見つめ、ギヤを落とし加速した。


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