戦場!クロスカントリー練習走行(4)
大通りの林道は緩やかに上っていく。
「ここはたぶん激戦区だ。抜きやすい。この先の林道にはいるところが勝負どころ」
瞬が一気に狭い林道に入り込む。
(確かに。この幅では抜きにはかかれない)
美樹雄の車幅で、道はいっぱいになる。ここで先手をとられると、引っ張られる。逆に、相手によっては体力温存もできる。
林道を抜けるとひらけてスタート地点もどる。ラストスパートの区間。
浩一と奈美が待っていた。
「水城、コースはだいたい把握できたか?」
「もう一度回ればだいたい。あの急勾配はやばかった」
恵はブレーキを握りながら少し気持ちが高揚して言った。理由は分からない。とにかく、ワクワクしたのは間違いなかった。
「あそこは気をつけて。当日はクッションを設置するけど、難関箇所なのは間違いない。ある意味コースの売りでもあるけど」
浩一は、美樹雄と瞬にもう一周回るように指示した。恵もついて行く。今度は美樹雄が先頭になった。
「ナミ!」
声の主を奈美は静かに見ていた。神沢妃美香だ。赤を基調としたウェアを身につけ、赤色のMTBにまたがっている。背中にはSEINTOREAと記されていた。セイントレア学園。小中高一貫教育のいわずと知れたお嬢様学校だ。
「久しぶりって言うほどでもないかしら。てっきり、一緒に高等部に行くと思っていましたが、何も言わずに去るなんて。どうして朝見校など。何もないとこなのに」
妃美香はいつものタカビーな感じから幾分控えめな雰囲気で奈美と話した。
(何もないって・・・・・・まいったね)
浩一は苦笑いをしていた。
奈美は表情を変えずに妃美香を見ている。
「たんなる気まぐれです。でも、何もなくはありません。おもしろいですよ。そちらよりは」
奈美の言葉に妃美香は眉をひそめた。
「気まぐれが飽きたなら、戻ってきたらいいわ。奈美なら、いつでも歓迎するから」
妃美香はチラリと浩一を見てから奈美に目を向けた。
「朝見校か。たしか美樹雄がいたわね。ここにいるってことは、もしかして、あなたも走るのかしら?・・・・・・まさかね」
挑戦的な口調と目を奈美に向けると、奈美は拳を握りしめた。その表情を見て、ふっと笑うとコースへ走りだした。
しばらくして美樹雄、瞬、恵の順で戻ってきた。
「先生、俺たちアップ終わったから、スラロームコースに行きたいけどいいですか?」
瞬が浩一に声をかけた。
「いいでしょう。相沢、三井はスラロームを。あそこも整備中だから、完全にはまだ使えません。昨年より距離を伸ばすようです。楽しみですね」
美樹雄と瞬は、ゲレンデの方に走り出した。
「さて、水城君。走ってみてどうでしたか?」
「いくつかおもしろそうな箇所がありました。でも、山道走るのは初めてじゃないから、コースが分かればこんなものかなと」
恵は奈美からドリンクを手渡されて口にした。
「頼もしいことです。でも、大会にでる以上は、上位を目指さないとおもしろくないでしょう。まさか、今更完走目指すなていうレベルじゃないですから。当日は、相手がいます。一人でも多く抜いて前を走る必要があります。言い換えれば、全力で走らないとおいて行かれます」
浩一はにこりとして恵を見た。
「次は5周走ってください。1周はさっきのペース。3周は全力で。ラスト1周は最初のペースで」
「分かりました」
奈美にドリンクを返すと恵は頷いて、ゆっくりとコースに戻り走り出した。




