初陣への招待状(3)
恵はあきらめた顔でL字になっている建物をグルッと歩き出し、”登山部”とネームの掲げられた一室のドアを開けた。
「あのー・・・・・・」
恵がひょこっと顔をのぞかせると中の人が顔を向けた。
「おや、恵、なあんだぁ。今日も負けたのか。しょうがないな。ほら、早く入りなさい」
そう言いながら手招きして恵をむかい入れたのは、相川恭子という二年生の先輩であった。もともと部員の少ない登山部に唯一残った女子部員である。それかどうかは分からないが、自転車部で女子一人がんばる恵にやたら優しくしてくれる面倒見のいい先輩であった。今年はなぜか新入部員が五人も入ったと喜んでいる。その新入部員たちはまだ見えてないようだった。
恵は素早くショートパンツをはくとさらにその上にジャージをはいた。
「へー、それで自転車にのるの?」
恵の着替えを見て恭子は声をかけた。
「いえ、これはウォームアップ用です。乗るときはショートパンツでほら」
恵はそう言って少しジャージを下げて見せた。
「でも、男子はちゃんとレーシングパンツってやつをはいてるのにね」
「ああ、あの二人は経験者だから道具は全部そろってるんです。私は始めたばかりだからスーツもまだできてないんです。今度、届いて来るんですよ」
恭子は納得したように軽くうなずいた。
「相沢君、だっけ、あの《《かっこいい方》》」
「えっ、美樹雄のことですか?」
「そうそう♡で、元気のいい方が」
「バカ瞬です」
恵は顔をしかめて見せた。それを見て恭子はクスリと笑って恵のカバンをロッカーに入れた。
「まあ、いろいろあるわね。でもイヤになったらいつでも登山部にどうぞ。歓迎するから」
「先輩こそ、自転車部にどうぞ。部長の座はいつでもあけますから」
恵は笑いながら部室を出ていった。




