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初陣への招待状(2)

自転車部の部室の中で瞬は大きく背伸びをした。


「あ~、今日も一番のりか・・・・・・やっぱ気持ちいいねー」


 瞬はロッカーに鞄を放り込み、自転車用のウェアに着替えるとそのままベンチに座り、朝買ってきた”サイク”という自転車の雑誌を読み始めた。

 

 しばらくして部室のドアが開き、美樹雄が入ってきた。


「よっ、ライバル登場」


 瞬はそう言うと雑誌から顔を上げた。美樹雄は軽く笑うと、すぐに自分も着替え始めた。


「恵はまだ来ないのか?」

「もうすぐ来ると思うけど」


 美樹雄がそう言いながら上半身裸になったとき、ドアを開けて恵が飛び込んできた。


 一瞬、部室は沈黙になったが瞬が元気よく第一声をかけた。


「よっ、恵部長!こんにちは」


 その声に素早く反応するかのごとく、恵はびっくりした表情で顔をみるみる赤くした。


「ごめんなさい」


 そう言って恵はドアを閉めて慌てて出ていった。


 部室で二人はキョトンと顔を見合わせると、瞬はこらえきれずに笑いだした。


「ケイってけっこうウブなんだな」

「当たり前でしょう。女の子なんだから」


 美樹雄はそう言うとスルリと上着の袖に腕を通した。その腕はほっそりとしながらも筋肉がついているのが一目で分かった。

 

 恵は外で赤い顔を冷ましながら、部室をとられたくやしさを思い再び顔が熱くなるのを感じた。


 そもそも問題は女子の部室がいまだにないことにあった。もっとも女子の部室というのは正確には間違いで部室が一つしかないというのが本当である。新設部のため部室の用意が間に合わず、とりあえず一つ空いていたところを自転車部の部室としていた。もちろん現在プレハブではあるが部室を新しく建設中とのことである。その間、一つの部室をめぐって男子女子(《《もっとも部員は三人であるが》》)の攻防があった。


 はじめ、美樹雄は恵に部室を譲ることを提案したが瞬は譲らなかった。恵もそんな瞬に負けじと言い返したため、二人は喧嘩状態になり結局意見はまとまらず、いつの間にかその日の放課後最初に部室に入った方が使用するという暗黙のルールが出来上がった。美樹雄は気を利かせて恵より遅れて来るようにはしているが、最近ではほとんど瞬が一番のりで恵は連敗続きであった。

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