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初陣への招待状(1)

 放課後を告げるチャイムが鳴る一分前、恵は腕時計とにらめっこをしていた。 


(今日は絶対に!)


 恵の机の上は教科書、次はノートと順にカバンに詰め込まれていた。もちろん、教壇で授業をしている先生には気付かれないようにそっとである。その様子を奈美はハラハラしながら眺めていた。なぜなら、こんなところを先生に見つかれば怒鳴られることは当然であったからである。学年主任の国語の授業とあってはなおのことであった。恵がペンケースをしまい込んだとき、タイミングよく授業終了のチャイムが鳴った。先生への礼を終え、勢いよく教室を出ようとする恵を誰かが呼び止めた。


「ミズキさん」

「はいな」


 恵は教室を慌て出ていきそうな体を無理矢理止めて、首だけを声の主に向けた。


「黒板、水城さん今日、当番」


 そう言って、教室の前に立っているのは松田という男子であった。松田は呼び止めてはいけない者を呼び止めたかのように、少しおどおどした顔つきで黒板を指さしていた。


「あちゃ~、やば、今日は日直だったんだ」


 恵はそう言いながら決まり悪そうに黒板に飛びつくと、みるみるうちに黒板の文字を消し始めた。松田は、恵の早技にただ呆然と見ているだけであった。


「えーと、日誌は・・・・・・異常なしでいいよね。それじゃこれ、松田君、あとお願いします」


 恵はそう言いながら、日誌に”特になし”の文字を書き込むと、松田に手渡した。


 松田はただ恵の促すまま日誌を受け取った。こうなると完全に恵のペースである。


とはいえもとから、気の良い松田は恵のテキパキ、ハキハキした言動に自分のペースをとられてしまっていた。


 恵は松田の肩をにっこりと笑って軽くたたいた。松田は、その笑顔に照れたように顔を赤らめ目をそらした。恵はそんな松田の仕草にも気付く様子はなく、教室をダッシュで出ていった。


「恵ちゃん」


 恵が廊下に飛び出したとたん、奈美が呼び止めた。


「えっ、何?奈美ちゃん、ちょっと急いでるんで後でいいかな?ごめんね」


 恵はすまなそうな顔で奈美を見ると、廊下をかけて行った。

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