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7.

 知らない女性が、私の部屋にいる。

 そして、殿下はどこかへ行ってしまった。

 しかし、それは勘違いだった。


 私の目の前にいる女性こそが、エミリオ殿下なのである。


「どうだろう? やはり、違和感があるのではないか? 街を歩いていて、男だと気付かれないだろうか?」


「大丈夫です、殿下。誰がどう見ても、今の殿下は女性ですよ。その正体がエミリオ殿下だとは、誰も思わないでしょう。もう、完璧ですよ」


 決して、私のメイクの腕がよかったわけではない。

 もともと殿下が美形なおかげで、ここまで完璧に仕上がったのである。

 服もサイズがぴったり合ってよかった。

 よかったのだけれど、なぜか少しだけ虚しい気持ちになった。

 なぜなのかは、あまり深く考えないでおこう……。


「エルシーがそこまで言うのなら、街に出ても大丈夫か……。あぁ、しかし、やはり少し不安だ」


「大丈夫ですよ。絶対にバレません。どう見ても今の殿下は女性です。あ、でも、そうですね。声をもう少しだけ高くした方がいいかもしれません。殿下の声はもともと、男性にしては高い方ですから、少し声を高くするだけで声の少し低い女性くらいになります」


「こんな感じだろうか?」


「ええ、それくらいです。その声の高さがちょうどいいです。あ、あとは、もう少し女性っぽい喋り方にしてみてください」


「……こんな感じかしら?」


「あぁ……、もう、完璧です。殿下、これなら絶対にバレません。自信を持ってください」


「わかった。君のことを信じるよ」


「では、さっそく行動に移りましょう。殿下、まずはこっそりと窓から外に出てください」


 当然、この部屋は一階である。

 殿下に飛び降りろと言っているわけではない。


「わかった」


「あとは外で落ち合って、受付で私と同室になるようにお願いしてみましょう」


「ああ、では、行こうか」


 殿下は窓から外の様子を見てから、周りに誰もいないことを確認した後、外に出た。

 私はそれを見届けてから、部屋から廊下に出た。


 今の殿下は、どこからどう見ても女性だ。

 まさか正体がエミリオ殿下だとは、誰も思わないだろう。

 ヘマさえしなければ、正体がバレる心配はない。


 私は廊下は歩いて、宿屋の外に出た。

 そこには殿下がいた。

 少し不安そうな顔をして周りの人を見ているけれど、どこからどう見ても今の殿下は女性である。

 周りの人がちらちらと見ているのは、殿下があまりにも美しいからだろう。


「それではさっそく、受付に行きましょうか」


「ああ、わかった。……ええ、わかったわ」

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