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6.

「……なぜ、女装なのだ?」


 殿下が、当然の疑問を口にした。

 まあ、いきなり女装しろと言われても、困惑するのは当たり前である。

 

「それはですね、先ほどもお話しましたが、殿下には一度、外に出てもらう必要があります。しかし、そのままの格好だと、殿下は目立ってしまいます。お召し物は高価なものですし、殿下は街の人たちに顔を知られていますからね。そこで、女装です。あ、べつに女装に拘っているわけではありませんよ。しかし、服を着替えようにも、この部屋には、私が持っている女物の服しかありません。それに、お顔もそのままというわけにもいきませんから、メイクする必要があるのです。兵たちにバレないようにするためには、これしかないのです」


 なんだか、殿下に女装してもらうための言い訳をまくしたてたみたいになってしまったけれど、これでも半分くらいは真面目である。

 もう半分は、おふざけと期待とその他もろもろだ。


「……わかった。確かに、変装するという意味では、合理的な判断だ。よし、ではさっそく女装しよう」


 キターーー!!!

 殿下の女装姿を見ることができる。

 まさか、こんな日が来るなんて思わなかった。

 殿下はもともと美形だし、女装姿は映えるに違いない。

 あぁ、楽しくなってきた。


 という感情を表に出さないように抑えて……。


「ええ、すぐに取り掛かりましょう」


 私はバックから着替えや化粧用具を取り出した。


「なんだか、やけに楽しそうだな」


「え……、そ、そんなことありませんよぉ……」


     *


 (※ナタリー視点)


「あらぁ、ナタリー。あなた、経営の勉強をしていたの? 偉いわねぇ」


 机に放りだした本を見て、お母様がそう言った。


「ええ、そうなの。これでもう、完璧よ。本に書かれている内容は、すべて頭に叩き込んだわ」


 少し、否、かなり盛り過ぎた返答をしてしまったけれど、まあ、私の才能があれば、経営は完璧だ。

 だって、右も左もわからない状態で、お姉さまがいきなり始めた時もうまくいったのだ。

 お姉さまにできたらのだから、私にだってできる。


「期待しているぞ。ナタリーはいい子だから、あいつよりも、さらに売り上げが伸びるだろうな」


「ええ、任せておいて、お父様。私にかかれば、売り上げもうなぎ上りになること間違いなしだわ」


「自信満々だね、ナタリー」


 レックスが私に微笑みかけた。


「ええ、売り上げが伸びれば、今よりもさらに贅沢ができるようになるわ。みんな楽しみにしていてね」


 私は笑顔で答えた。

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