50.
(※ナタリー視点)
私は勇気を振り絞り、玄関の扉を開けて家の中に入った。
リビングへ向かうと、皆の視線が一斉に私の方へ向いた。
婚約者であるレックスも、お父様もお母様も、真剣な眼差しだった。
そして、少し不安も混じっているような表情をしている。
そんな表情になってしまうのも、当然のことである。
お姉さまから奪ったお店の経営がうまくいっていないなんて、皆はそんなこと、思ってもいなかっただろう。
なにもかも、すべてうまくいっていると思っていたのだ。
いや、もっと正確にいえば、私にそう思わされていた。
みんなから、お店の経営状況を聞かれたこともあった。
さらに、お店の様子を見に来たこともあった。
しかし、私はその度に、嘘をついたり、サクラを使って騙したりしていた。
そのツケが、今になって回ってきてしまった……。
「ナタリー、そこに座りなさい」
「……はい」
お父様に言われて、私はソファに座った。
向かい側からは、三人の鋭い視線がこちらを向いている。
今までにそんな鋭い視線は向けられたことがない。
私はうつむき、彼らと視線を合わせないようにした。
とても、視線を合わせられる状況ではない。
「さて、ナタリー。いったいどういうことか、説明してもらえるか?」
お父様のその言葉を聞いて、私の体は震えていた。
私は、どうすればいいの?
全部、正直に話す?
いや、そんなことしたら、皆から失望されてしまう……。
でも、もう誤魔化すことすら難しい状況になってしまっている。
私は、いったいどうすればいいの……。




