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35.

「そういえば、倒れた人がほかにいるというのは聞きませんね。全部のクッキーに毒が入っていたら、今頃町中の人が倒れて、大騒ぎになっていたでしょうから」


 私は憲兵の人に尋ねた。


「ええ、そうですね。私たち憲兵も、こうして町の皆さんに注意するように呼び掛けていますが、今のところ、クッキーを食べて倒れたという事案は発生していませんね。あの一件だけです。なので、ご安心ください。もちろん、あの出店のクッキーを食べることを推奨するわけではありませんが……」


「あの一件だけだと分かっていても、怖いですからねぇ。万が一ということもありますし……。これって、事故ではないのですよね?」


「ええ、たまたま一つのクッキーの中に毒が入るなんて可能性はほとんでないと言ってもいいでしょう。あきらかに、誰かが作為的に入れたのです」


「怖いですねぇ。早く犯人が捕まってほしいものです」


「ええ、そのために、我々も全力を尽くしています」


「容疑者とかは、いないんですか?」


「それは申しわけありませんが、教えるわけにはいきません。機密事項ですから」


「そうですか……」


「はい。では、失礼致します」


 憲兵の人は立ち上がった。

 そして部屋を出て行こうとしたが、何か思い出したように立ち止まった。


「忘れるところでした。あの出店で買ったクッキーを回収しているのです。強制ではなく任意なのですが、いかがなさいますか?」


「えっと、ではお願いします」


 私はクッキーを渡した。

 なんとなく捨てるのはもったいないと思っていたので、ちょうどよかった。

 憲兵の人はそれを受け取り、部屋から出て行った。


 とりあえず私たちは、ホットケーキとホットコーヒーを注文した。

 

     *


 (※ナタリー視点)


「ご苦労様。これが、約束の報酬よ」


 私は男たちに、お金を渡した。


「ああ、なんて楽な仕事なんだ」


「店で飯を食うだけで、金がもらえるなんてな」


 男たちはお金を受け取り、喜んでいた。


「それじゃあ、私は失礼するわ」


「また次があったら、いつでも声を掛けてくれよ」


「ええ、次があったらね」


 私は彼らの元を立ち去った。

 ふぅ……、彼らを雇ってなんとか、お店が繁盛しているように見せかけることができた。

 苦肉の策だったけど、思いついた自分を褒めてあげたい。

 

 しかし、私は彼らを雇ったことを、後悔することになるのだった……。

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