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29.

「どうしましょう、エミリーさん。私たち、クッキー食べちゃいましたよ?」


 私の声は、微かに震えていた。


「根拠のない話を、気にし過ぎよ。毒で倒れたのかどうかもわからないし、毒だったとしても、それがクッキーに入っていたとは限らないわ」


「あ、確かに、そうですね。つい、嫌なことを考えてしまいました」


 このクッキーはべつに、変な味はしないから、きっと毒なんて入っていない。

 私は再びクッキーを食べ始めた。

 ああ、やっぱりおいしいわ。

 僅かに入っているブルーベリーが、いい役割をしている。


「……あれ? エミリーさん、もう食べないんですか?」


     *


 (※ナタリー視点)


 さて、私はなんとか言い訳をしてみたけれど、その反応は……。


「ああ、そういうことだったの。あのお店は、ほとんど夜にお客さんが来るのね。知らなかったわ」


「確かに店も騒がしくなくて、落ち着いて食事をすることができたよ。静かに食事がしたい時は、ああいう場所が最高だな」


 お母様とお父様の言葉を聞いて、私は胸をなでおろした。

 よかった……、何とか嘘で誤魔化すことができた。

 とりあえずほっとしたけど、家族に嘘をつき続けている罪悪感が、じわじわと私の心を削っている感じがした。


「確かに静かなところで食事ができるのは、いいことだね」


「そうでしょう、レックス。夜も悪くないけれど、あのお店に行くのなら、お昼がおすすめだわ」


 私はレックスに微笑んだ。


「確かにそうだね。でも、夜の賑やかな雰囲気も、どんなものか気になるから、一度行ってみたいな。お義父さん、お義母さん、どうですか?」


「ええ、いいわね」


「確かに、夜もどんな感じなのか、見ておきたいな」


「え……」


 ちょっと、嘘でしょう……。

 せっかく嘘で乗り切ったと思ったのに、夜も来るなんて……。

 夜は客がたくさんいると言ってしまったから、静かな雰囲気を楽しめるという言い訳は、もうできない。

 

 このままだと、今度こそ間違いなく、お店の経営がうまくいっていないことがバレてしまう……。

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