23.
(※ナタリー視点)
そうだわ!
きっと、さっき夕飯を食べていた時に、落としてしまったのね……。
私は急いで戻った。
「え……」
しかし、遅かった。
私が到着した時には、売上表を見ているお父様の姿があった。
どうしよう。
ついに、恐れていたことが……。
売上表を見られてしまった。
利益が少し上がったというのが、嘘だということがバレてしまった。
お父様もお母様も、いつもお姉さまではなく私の味方だった。
しかし、この状況はさすがにまずい。
いくらなんでも、この状況で私を許してくれるとは思えない。
「ナタリー、これはいったい、どういうことなんだ? 明らかに売り上げも利益も落ちているぞ……」
お父様の厳しい眼差しが、こちらを向いていた。
「あ、それはね、お父様……」
私は必死に言い訳を考えていた。
何か、何か言い訳を考えないと……。
このままでは、私は無能扱いされてしまう。
それどころか、大事なことで嘘をついたから、間違いなく信用を失ってしまう。
何とかしないと……。
でも、既に売上表は見られてしまっている。
もう、どうすることもできない。
私がもう少し、早く気付いていればよかった。
そうすれば、違う結果になったかもしれないのに……。
……いや、待って。
諦めるのはまだ早いわ。
私はある言い訳を思い付いた。
そして、すぐにお父様に伝える決心をした。
「実はね、私、ほかのお店の経営もお手伝いしているの。私の経営者としての素晴らしい手腕が評価されて、噂になっていたのよ。そして、その売り上げ表は、うちのお店じゃなくて、違う人が経営しているお店よ。こんなにひどい状態だから、何とか立て直してほしいって頼まれたの。だから、何か策を考えて、これから立て直すところよ」
さて、どうなるかしら……。
お願いだから、私の言ったことを信じて……。
ただならぬ緊張感に支配される中、私はお父様からの返答を待っていた。
「そうか……。すまないな、どうやら早とちりしてしまったようだ。自分のところの利益を上げるだけでなく、ほかの人のことまで助けてあげるなんて、ナタリーは本当にやさしい子だな」
お父様が、売上表を返してくれながら言った。
私はすぐに売り上げ表を受け取った。
「私が経営しているんだから、利益が下がることなんてありえないわ。お父様も、わかっているでしょう?」
「ああ、もちろんだ。こんなに素晴らしい娘の父親であることが、私は誇らしいよ」
さっきの険しい顔から一転して、お父様は笑顔になっていた。
あぁ、何とか難を乗り越えることができたわ……。
しかし私には、このあとさらなる困難が訪れるのだった。
この前実施した、あの方策によって……。




