第二話
僕は、自分の意思で動く咲ちゃんたち人間と同じ手をまじまじと見つめて、握ってみたら開いてみたりした。やっぱり、自由に動く、これはもしかして僕の手なのだろうか?
他の部分を見てみた。足も人間と同じだし、驚いたことに人間の洋服も着ている。短パンに胸元がふりふりしているシャツだ。
僕が、自分の体を触ったり見たりしていると、鎧を着た女性と男性が近づいてきた。
重そうだな…そう思ったとき、はっとした。
鎧なんて昔の僕は知らなかった。これが、神様がくれた知識なのだろうか?
そのことに驚いて、考え込んでいるといきなり身体が浮いた。
「うわっ!」
「随分とちっこいけど、本当これがそうなのか?違うんじゃねぇ?」
浮いたと思ったら、近づいてきた女性に脇を持たれて高い高いをされている。
僕のことをこれって、物みたいに言うなんてひどいなとおもったけど、口調が全体的に乱暴な気がするし、悪意はないのかな?
でも、それにしても綺麗な人だ。銀色のピンしている三角耳と長い尻尾はもちろんだけど、顔立ちも綺麗。特に空色のまん丸な瞳の色は何時間でも見ていられるなと思った。
空色の瞳をじっと見つめていると、急にぐいっと引っ張られて、今度は男性に抱えられた。
「姉さん、これなんて失礼ですよ。たしかに、信じられませんがね」
姉さんということは、女性の弟なのだろうか?
たしかに毛の色も同じだし、きれいな顔立ちも似ている。だだ、瞳の色は赤くて夕焼けの色と似ていた。髪の色や目の色は違うけど、咲ちゃんが昔見せてくれた本の中の王子さまと少し似ている。
「おい!お前ら、神が我々に与えてくださった希望の光に対して失礼な態度を取るんじゃない!」
どすどすの音を立てながらやってきて、そう言ったのでっぷりとした体型の白い服をきた男だった。その男を二人は見もせず、スルーする。
「とりあえず、自己紹介をしますね。私の名前は、リアム、そして先ほどまであなたを持ち上げていたのが私の姉のライリーです。あなたの名前を教えていただけますか?」
「は、春です」
お、おおお!
咲ちゃんみたいに言葉を話せた!なんとなく、話せる気がして、名前を言おうと思ったら口が勝手に動いた!
僕がそのことに感動していると、ぽっぺをつんつんと突かれた。
「ハル、とりあえず王様のとこに連れて行くぞ。」
そう言ったライリーが、僕を抱っこしているリアムと一緒にが歩き出した。すると、周りから制止する声がかかる。
「まずは、説明をして差し上げなければ。私がさせていただくのでこちらに」
「いや。まずは、お食事を。私の家にお招きしよう」
「いえいえ、まずは疲れを癒すことが先でしょ。我が家自慢の風呂を是非使っていただきましょう」
他にも色々なことをみんなが一斉に言っているからあまり聞き取れない。うるさくて耳が痛くなりそうだと思った時、ライリーが手を2回パンパンと叩いた。
「みなさんはお静かに。王様に、あたしたちが直接連れてくるように言われているので、あなた方の言い分は聞く気はないし、文句は受け付けない。まさか、王の命令に逆らう不忠な者はいないだろ?それ、じゃあまた」
ライリーとリアムは、返事を聞くことなくまた歩き出した、僕を連れて今いる部屋から出て行った。
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