第8話
僕の腹減り問題は解決した
どうやってだって?単なる我慢だ
「いくぞ。カオスん」
「その呼び方やめろ」
「いいから!物語が進行しないだろ」
「………ちっ」
空気を呼んでくれたカオスんは先ほどの困っている生き物の気配方面へと案内してくれる。
腹が減ったとはいえ、毎日3食は食べていた僕が飢えて死ぬようなことにはならない。
お腹がすいて動けないー!なんてことにもならない
さっきなってたけど
あれは八割いじけてたからです
すんません
「あ。腹減ると体力減るから気を付けて」
「色々おせーんだよ!!」
とはいえ、元レベルマックスの体力の上限値はこんなことでは微動だにしない。
スキル暴発可能、魔法暴発可能!
ただしそれでレベルが下がる可能性大!!それが僕だ。
「言っててむなしくならんの?」
「うっせ」
道中は省略する。
いつものカオスんとの掛け合いが続いただけだ。
景色もただの森だし。
「え」
そして辿り着いた目的地
カオスんの指さすそこには
天使がいた
「ふぁ!????????」
倒れた天使
白い髪
伏せられた睫毛は長く
唇はほのかにピンク色
天使だ
背中に白い翼
天使だ
だがんなことよりも
「大丈夫ですか!?????」
道端にぶっ倒れてるなんてやばすぎるだろ!
なにがちょっと困ってるだ!この馬鹿精霊!
「ゆーすけだって倒れてたじゃん」
あれは芝生の上だからな!
芝生はいいんだよ!天然の絨毯だよ!
「じゃ、この子も天然の床に倒れてるだけで…」
「砂利道は天然の床とは断じて!言わん!」
いや、カオスなんだ
カオスなんだからほっておこう
僕なんかの知識を総動員したところでできることはたかが知れてる
何度も言うが僕はガキだ
漫画や小説のヒーローたちのような気が利きまくる若者じゃない
雨のふる仕組みもよくわからんガキだ
勉強なんかだいっきらいだ!
…でもやっとけばよかった
道に倒れた人を見つけたらどうすればいいか勉強しとけばよかった
あ!救急車か!
馬鹿野郎!!ここは異世界だろうが!!
「ゆーすけくん。まずはですね。日陰に移動しましょう」
大慌ての僕を見かねてカオスんがアドバイスをくれた。
日陰に移動し、魔法で作った水を与え、傷があるかを確認。
羽だらけの手はじっとり汗ばんでいて、翼で隠れたところに矢傷があった。
というか矢が刺さってた。
「ぬぬぬ抜きましゅか!?」
「毒があるかもしれないから抜きましょう」
「かかかかかk回復魔法!!」
「はい。ありませんので、布で止血しましょう」
「や、やばい血が!とま!らん!!」
「はい。それじゃ魔法使って薬草生やしましょう」
「草!?まじでただの草ぁ!!!」
「見た目草だけど薬草ですので、すりつぶして傷口に塗りましょう」
僕の無能っぷりが盛大に露見
カオスんの意外な有能さが大公開
やば、なんか泣きそう
「ゆーすけは焦りすぎ」
「だって、血なんて、まじで初めて見た…」
「そうゆーならこういう…鳥人間が初めてでしょ」
「鳥人間?」
あ、そうか
天使じゃないのか
手にも羽毛、背中も羽毛
足は普通だな
背中に羽があったから天使と思ったよ
そういえば性別どっちなんだろ?
頭てんぱりすぎてそんなことにも気が回ってなか
「ゆーすけ!かくれて!」
カオスんの声に悶々とした頭がごいんと鳴る
え。どゆこと?と言う前に状況はわかった
目の前には人。ちょっとガラの悪そうな人が複数
。
いかにも狩の後ですよって雰囲気だが、その獲物は動物ではないようだ。
「お前。俺の獲物に何してんだ?」
悪人Aは天使を指さしてそう言った