第7話
チュートリアル段階でレベルが2も下がり、始まりの街的なところからは追い出され、ムカつく精霊はまだ僕の姿をしていて、せっかくの異世界なのに腹減って死にそうで
「もうやだ帰りたい」
心が折れそうだ。
「帰れないから諦めな」
「つーかどうやったら帰れんの?」
「魔王倒したら」
はい。もう無理。詰んだー。
「腹減った腹減った腹減った!何とかしろよ、精霊!」
「私はお腹空かないもん」
「僕は空くんだよ!何とかしてよ!普段なら弁当買えてるんだよ!コンビニ召喚ーーー!!」
「………だめだ。こいつ」
おい。役に立たねぇ精霊にこいつ呼ばわりされる筋合いはねぇぞ。
でも、だめだ。腹へりすぎて動けん。
「ていうかおかしいだろ!異世界なのにヒロイン出てこないし、ギルド入ってなんちゃらこうちゃらもないし、どっかのパーティから追放されるなんてイベントもないし!
なんだよ!初っ端なら腹減ったって!そんな異世界ものあってたまるか!」
「こちらにございます」
「うるせぇ!つーかキャラぶれぶれなんだよ!さっきからさ!」
「まぁ精霊だし」
ああああああ!もういやだぁ!!!
こうなったらモンスター喰うか?
ありがちだよな!その異世界ものも!
でも、わかってんだよ。どーせレベル下がるんだよ
まだ298あるからといっても、こう余裕かましてたら一瞬で雑魚レベまで落ちるんだよ。
わかってんだよ、なぁ…
「あ」
というかあれだよな
ラノベ主人公もチートチート言われてるけど、大概酷い目あってるもんな。
人の意識ありながら草食いまくったり、虫くったり。仲間に裏切られて巣窟的なとこに置き去りにされたり、白髪になるまで頑張ったりさ。
最初からチートのやつもいるけど、苦労人の方が多いもんな。
それなら僕のくらい大したことないか。
「ゆーすけゆーすけ」
レベル下がるのも、腹減ってるのも、精霊がいるのも、腹減ってるのも、街から追い出されるのも、腹減ってるのも…
「おい、乞食」
「まじでやめろ。その言い方!」
「いいからあっち。生き物の気配がする」
「いきなりナマモノ食わそうとすなや!」
こいつほんと頭おかしいんじゃねぇの?
そこは果物とかそっち系にしてくれよ
いきなり何か殺して食おうなんていうサバイバル精神持てるか!
「まぁ殺したらレベル下がるし、やめだろうがいいだろね」
まじか。
モンスターだけじゃなくて生き物もか。
この調子なら人間もだな。
…まぁいいけど
何かを殺す度胸なんてないし
「でもさ。その、生き物?なんか困ってるっぽいよ?」
生き物のあとにクエスチョンつけんな
行く気失せるだろーが
「おまえが行けばいいじゃん」
「行ったところでどうしろっていうんだよ」
「単なる視察」
「それじゃただの野次馬だろ」
ほう
この精霊、野次馬なんて言葉知ってんのか。
よくよく考えれば、僕の言葉に合ってるよなぁ
異世界に野次馬なんて言葉あるんかな?
「……というか、ですよ」
「ん?」
「おまえ、名前なんていうの?」
「………いや、ほんと今っさらだな!」
精霊が驚きのあまりに姿を消す
というか光の塊に戻った
「…別に精霊でもいいんだけど。私は」
「あるなら言えよ。僕のことも勝手にゆーすけって呼んでんだし」
「あー…」
精霊は、なんだか嫌そうだった。
「私の名前はー……カオスです」
………ん?
「なんて?」
「カオス」
「かおす?」
「カオス」
記憶を探る
カオスの意味。それは、グーグ○先生によると…
混沌。
「カオスさん」
「はい」
「実は俺が魔王だってオチじゃないよね?」
精霊はカオスの名に相応しくないほどの眩い光で僕の目を潰した。
腹へりの僕にトドメを刺すかのような攻撃に人生初の悲鳴をあげた。
第7話にして、望んでもない相棒の名を僕は知ることになったのだが。
カオスという、女神に従うとは思えないような、立派な厨二臭い名前だった。