第2話
僕は山田。
この度何の縁か、この度異世界に召喚されて、魔王を倒すことになりました。
ただし、僕のレベルは現在のマックス状態から徐々に下がるらしいです。
「いや、ないだろ!それなら魔王前とかに転送してもらえばよかったわ!」
「いやいや。それは無理があるっしょ。虫も殺せない日本人がいきなり人型殺すとかないわー」
と、目の前の光の塊は言う。正直あれだ。人魂に見える。
まぁ察するけども、一応聞いとこう。
「…誰?」
「精霊。女神さまから説明あったでしょ」
ですよね。召喚特典のひとつ、知識補填のやつ。まさか可愛い女の子でも小動物でもなくて、光の塊とかいう味気ないもんだとは思わんかったわ。
「一応、確認しとくけどさ」
「はいよ」
「レベルが下がるって、まじ?」
「まじっす」
あぁ、どうしよう。ぶっ殺したい。
まじでほんとにぶっ殺したい。
何をって?人魂と女神だよ!
「…ちなみに、何となくだけど考えてること分かるから」
「あ、そう」
「人魂じゃねーから」
「んじゃそう見えない見た目になれば?腐っても精霊でしょ?」
「……」
「ほら。美少女とか。美少女とか。美少女とかさ」
人魂がゆらゆらと揺れる。
心無しか、光が点滅しているようだ。
そして光の玉はゆっくりと形を変えて
まさかの僕の姿になった。
「おい」
「レベルの下がる方法とか知りたい?」
「おい」
「知りたくねぇのかよ?あ?」
精霊の僕は口が悪かった。
「ソウデスネ。教えてもらえないと困りますね」
「OK」
人魂の僕は得意気に腕を組む。
ムカつく奴だが仕方ない。
こんなのでも僕への召喚ボーナスなんだし。
「まず、あんたが女神さまに呼ばれたことを知られたら、数レベル下がります」
「は!?数レベル!?」
「100レベル下がるかもしれなしぃ~、1レベルかもしれないしぃ~」
しぃ~じゃねぇよ!
いや、んなことはいい。
まさかランダムなのか!?
僕のこの状況を共有してくれる誰かは作れないってことなのか!?
「まぁ。私いるじゃん」
「まじでぶっ殺すぞ」
「まぁしょうがないよ。女神さまがこの世界に向かわせたのがこんなのってなると、ねぇ?信仰的な問題がさ」
「よし。ぶっ殺す」
精霊をぶん殴る。しかし実体の無いコイツは体が1度崩れただけで、また元に戻った。
「自分と同じ姿の私ぶん殴って満足した?」
「うるせぇ!」
「あ。むしろビビってる」
「うっっっせぇ!!!!」
精霊クソ野郎はにたにたと笑う。
やめろ。僕はそんな気持ち悪い笑い方はしない。
「んじゃー次。
次に何かを倒したら下がるよ。これは数経験値分だから、いきなりレベル落ちたりはしない」
「正当防衛でも?」
「当たり前じゃん。そろそろ平和ボケから頭切り替えなよ。これもランダムだから、倒さない方がいいだろうね。
レベルが下がるのはそんくらいだよ」
……よし。苛立ちは置いとこう。
つまりは、だ。
今の僕は最強だけど、魔物を殺せば下がっていくと。人に教えても下がると。
なら、あれだ。つまりは魔物倒さずに魔王城まで行けってことだな。
「あ、魔王城まで行くには四天王の城を落とさないと行けないよ」
「ん?」
「各城に魔物は…1000体はいるね!」
お前らホントぶっ殺されたいの!?
どっちかって言うと魔王より女神ぶっ殺したいんだけど!?
「あ。魔王倒さないと、なんとあなたの故郷が終わります」
「っっっっざけんなぁぁぁあ!!」
僕はあらん限りの力で精霊をぶん殴る。それを精霊は避け、威力はそのまま後ろの木へ。
ばばばばばばばばばばばばっ!!
木は、砕け散って消えた。
「………ふぁ?」
「お前のレベルは現在300。魔王は200程度だったかな。この世界はレベルで全てが決まるから、この時点でお前は最強だよ。今は、だけど」
「そ、そそそそうなんだ」
「ビビってんなよ。人間はマックスでも100レベルいくかいかないか。だから誰も魔王を倒せないんだ。寿命には勝てないからね」
「あ、そう…」
「あと、使えるスキルとか魔法とかは頭ん中にあるから分かるだろ」
うん。そう、ねぇ…
「いや、そうじゃねぇよ!!」
「ん?」
「故郷が終わるってどういうことだよ!!」
「いやぁ。この世界終わったら、ここの魔王は次に移動するらしくてさ。
だから女神さまもその次の世界の人を選んだらしいよ?お前だったのは、ただの偶然だけど。
あ、ちゃんとサインしてもらった紙に書いてあったから」
あ。ありえねぇ…。
まじでないわ。
急に異世界に転移させられて、レベル上限値だけど下がっていく仕様で、失敗したら世界が滅ぶとか…。
まじで、ないわぁ。
「まぁ気にするなって。ゆーすけが来なけりゃそもそも滅ぶの確定だったわけだし。それが多少変わっただけだからさ。気にせず頑張れ」
え。
えぇー………。
「まぁ、そうだな。うん」
気にしたって仕方ないしな。
僕、まだ子供だし。そんなこと考えすぎると死んじまうわ。
この世界を生きることを頑張ろう。
「よし。精霊。とりあえず、まずやることがある」
「なになに?」
僕は山田。山田勇輔。
今だけの最強チートで、魔王倒さないと地球が滅ぶとか言われた10代の子供です。
「さっきから馴れ馴れしいんだよ!!!」
スキル:霊体殴り発動
「ふぐっっっ!?」
とにかくこの世界のこともわかんないし、とりあえず生き抜くことを目標に頑張ろうと思う。