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第十二話 ヒロイン役から逃げたい私は、悪役令嬢に心を掴まれる

 最初は将来を保証してくれる、という打算的な契約であったが、今では受けて良かったと思っている。

 その一つが生徒会に所属することだった。

 

 協定が結ばれた数日後、私は生徒会室に呼び出されて、グレース様から「レクシーさん、生徒会を手伝ってもらえません?」と勧誘を受けた。


 現在生徒会役員は二年のグレース様たちがメインで動いているのだが、グレース様以外の役員は予想していた通り第二王子(ナルディス殿下)とその取り巻きたちらしい。ミリアに執着するあまり、来なくなったのだとか……第一王子(ルーベン殿下)率いる三年生の生徒会役員も手伝いをしてくださるようだが、後期になると卒業後の進路に向けての勉強や手伝いが始まり、生徒会にまで手を掛ける事ができないのが現実だ。なので実質、グレース様のみで生徒会を動かしているそうな。


 普通生徒会役員は前期の学年末試験の結果を考慮して決定し、一年の後期から生徒会役員として活動するのだが、たまに優秀な生徒は生徒会役員から推薦されて前期から参加する事ができるらしい。

 今回は私の家庭教師の先生方--メアリ先生とアナベル先生だが--から私が優秀だとお墨付きを頂いたことで、学園の先生方が私を前期から生徒会に入れることを納得したとのこと。メアリ先生とアナベル先生は有名な家庭教師らしく、求めるレベルが非常に高いとのことだが、半年で彼女たちが求めるレベルに到達した私は優秀な部類に入るとのこと。ちなみにこれが表の理由であり、裏の理由は人手不足と言う事で私に白羽の矢が立ったそうな。


 「ほら、生徒会役員が彼らですからね」とグレース様は苦笑い。学園の先生方も第二王子の目に余る行動を諌めようと何度も声をかけたらしいが、「俺は王族だぞ」と聞く耳を持たなかったそうだ。第二王子を更生させるより、優秀な一年生を入れた方が……と思ったのかもしれない。


「在学中の生徒会役員という肩書きは、文官、宮廷魔道士辺りではプラスの評価になるのよ。貴女は文官見習いでも宮廷魔道士でも、今のまま頑張れればどちらも目指せると思うけれど……より就職を確実にするために、入ってもらえたら嬉しいわ」


「はい、やります」


 そう言われたらやらないわけにはいかない。まぁ、しがない男爵令嬢が公爵令嬢のお願いを断れるわけがないし。


 それから私はグレース様と共に放課後は生徒会活動を中心に校内を走り回っていた。グレース様は生徒会室で書類の処理を、私は書類の分類や処理された書類を返却や訂正のお願いなどを任されていた。


  最初はヘトヘトになって生徒会室に帰ってきていた。体力はある方だと思っていたが、学園も広いため目的の人物が見つからないこともあるのだ。文字通り、学園中を走っていた。

 グレース様は最初からスパルタだった。放課後生徒会室に入ると既に彼女は書類と向き合っており、入ってきた私に気づいた瞬間に、「これをお願い致しますね」と私の机に置かれた書類の山を指差すのだ。ちなみにグレース様は私の数倍の書類に囲まれていて、大体二日程でその量を終わらせてしまうのでやはり有能なんだな、と思う。


「あら、お疲れ様。サラ、レクシーさんにお菓子を」


「畏まりました」


 そして学園を走り回った疲労困憊の私に用意してくださるのが、公爵家の料理人が作ったケーキ。しかも前世を思い出したグレース様が前世のレシピを参考に料理人と共に開発したものらしい。

 しかもそれが私が好きな生クリームを使ったケーキ!そしてチョコレートをふんだんに使用したクッキー!なんと好みドンピシャなのである。グレース様から「新作を作ったので味見をしてもらいたいの」と、私が今までに飲んだことのない美味しい紅茶も添えて、グレース様付き侍女のサラさんが用意してくれる。


 そう、私は胃袋を掴まれたのだ。前にも話したが、この世界のお菓子といえば焼き菓子で種類が豊富ではない。前世のケーキ屋さんのショーウィンドに飾られていたようなケーキやチョコレートなどは食べられないのだ。

中途半端に甘いお菓子を食べて甘いもの欲求が強くなっていた私に、グレース様が前世のレシピで作ったお菓子を私にくださるなんて……しかも公爵家の料理人は一流ですからね!美味しいに決まっている。

 いつも淡々とされているグレース様ではあるが、最近これが彼女の優しさなのかもしれない。そう思いながらも私はお菓子を平らげたのだった。

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[一言] 掴んだのは心なのか胃袋なのか
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