9 サクラの手料理
「テルお兄ちゃん! ご飯の用意が出来たよ!」
「……ん? ああ、俺寝ちゃってたのか」
光輝はソファから体を起こす。サクラとサラがご飯の用意に行った後暇になったため眠っていたようだ。
「おお、いい匂いだなぁ」
「お姉ちゃんと一緒に頑張って作ったからね! さあはやく食べよ!」
こうして光輝はご馳走が所狭しと並んでいる机の椅子に座らされた。
「うまそうだな……」
目の前には光輝の大好物であるハンバーグにコロッケやエビフライなどがあり、彩りも考えられてサラダなども用意されている。
光輝の目はそんなご馳走達に釘付けだ。
それを見ているサクラとサラは笑みを浮かべながら音頭を取り始める。
「「手を合わせて、いただきます!」」
「いただきます!」
いきなり始まった2人のいただきますの音頭についていけずに遅れてしまったが光輝も手を合わせてきちんと言う。
「どうぞ召し上がれ!」
「じゃあ遠慮なく……」
箸を伸ばすのはもちろん、目の前の皿に乗っているゲンコツサイズのハンバーグだ。
隣にデミグラスソースらしきものと大根おろしも用意されているのだが、まずはそのまま何もつけずに口へ運ぶ。
齧り付いた瞬間はなんとも肉肉しく食べ応えのあるハンバーグだと思われたのだが、その中からすぐに肉汁が溢れ出してきた。
その肉汁は光輝の鼻から抜け出していき、その際に通り過ぎる風味が光輝を楽しませる。
そんなものならば、さぞ油っこいだろうと思われるところなのだが非常にさっぱりしていたのだ。
「あ」
その味を楽しんでいる間に気づけば口の中が空になっていたのだった。
物足りずにもう一口齧り付くのだが、またも気づけば無くなっており、また齧り付く。
そのループがずっと続いていく。
「あ」
光輝はまたも声を上げる。
それもそのはず、ゲンコツサイズのハンバーグが全て無くなっていたのだから。
それをサクラとサラは嬉しそうに見ていた。
「お兄ちゃん、おいしかった?」
「ああ、こんなうまいハンバーグを食べたのは初めてだ……」
光輝は感動すら覚えていた。そんな様子なのだからお世辞でないのはすぐに分かるだろう。
2人ともとても嬉しそうだ。
「お姉ちゃんはとっても料理が上手だからね! あ! もちろん私も手伝ったよ!」
「ああ、2人とも料理がとっても上手なんだなぁ」
「ほらほら、ハンバーグだけじゃなくて他の料理もいっぱいあるんだから食べて食べて!」
サクラは面と向かって料理が褒められて嬉しそうな笑みを浮かべているが頬を赤らめて照れてもいた。
コロッケの皿が光輝へ顔を隠すように差し出されたのはその照れ隠しなのだろう。
「んじゃコロッケもいただきまーす」
コロッケもソースをかけることなくそのまま齧り付いた。
サクッとした音と共に口の中へ入ったのだが、中ではホクホクしたじゃがいもの滑らかな舌触りで、咀嚼をする度にドンドンと強くなる甘さが口内を覆い尽くす。
そして口内だけだは物足りないとほのかな甘さをもつじゃがいもの風味が鼻をスっと抜けていきなんとも心地よい。
このコロッケも味を楽しんでいる間に気づけば無くなっていた。
「こんなうまいコロッケも初めてだ……」
あまりの感動に涙さえ流しそうになっている光輝である。
「もー、まだまだあるんだからいっぱい食べなさいな!」
そう言ってサクラもコロッケを口へ運んでいく。
それを見ていたサラは
「あー! お姉ちゃん照れてる!」
ませた子供のようなニヤニヤとした笑みを浮かべながらサクラをからかい始める。
「照れてません! サラも早く食べなさい!」
「はーい」
こうきて3人は本格的に素晴らしい料理の味を楽しむのだった。
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